しとしとと優しい雨が降る、そんな日の昼下がり。
今日は久しぶりに宝石商が来ていて、目の前には今度の催事に向けて用意されたアクセサリーがところ狭しと並べられていた。
「こんなにたくさんあると悩みますねっ」
「そうね、どれを選んでいいか迷っちゃうわね」
隣にはティアラも一緒で、煮詰めた蜂蜜のような濃い金色の宝石がついたネックレスを手に取りながら難しい顔で眺めている。
「ティアラはそれが気に入ったの?」
「えっ⁈ そ、そんなことありませんっ! 綺麗だなと思ってちょっと手に取ってみただけですっ」
パッ、とこっちを振り向いて目を丸くしたかと思うと、一瞬で顔を赤くしてアクセサリーを元の場所に戻す。違いますからねと頬を膨らませる姿に、なんだか悪いことをしてしまった気がして宥める様に頭を撫でた。
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