過去ログ12ガツっと硬い小石を杖が突き、バランスを崩して痩躯の男が大きく体制を崩した。男が通ってきたレッドグレイブの市街には散り散りになったクリフォトの根が落ちている。体勢を立て直そうと地面を踏み鳴らしたが足場の悪い地面ではそれも叶わずに、膝から崩れ落ちるように転倒した。
立ち上がろうにもタトゥーが刻まれた腕は砂が詰められたように重く、地面に擦り付けた額を持ち上げることにすら難儀した。無力感と倦怠感から苦しげな呻き声が溢れる。
「おいおいVちゃん。そんなんでユリゼンをシバこうたって無理があんじゃねえのぉー?」
軽薄そうな口を開いたのはVと呼ばれた男の頭上を羽ばたく一羽の鳥だ。
猛禽類に似たその鳥は大きく、黒い羽は光に透けると青く輝いた。それだけであれば珍しい猛禽類の類だろう。だが、普通の鳥とは異なり三つの嘴を持っていた。そして人語を解して人間であるVと会話を成り立たせている。
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