最近ブルックの側でゾロをよく見かける。
とはいってもブルックは眠っておりその傍らでゾロが座り込んでいるだけなのだ。
いつも大体寝ているのに、ゾロは眠りもせずただ座っている。しかも酷く気配を尖らせて。
ブルックが起きたらそれは消え失せるしゾロも目を閉じて昼寝に移行する。まったくもって謎だ。
さらに謎なことに毎回ではない。夜寝るときは普通に男部屋でバラバラで眠っているし、ブルック一人で昼寝していることもある。
ただ、間違いないのはゾロが側にいるときブルックは昼寝をしているのと、週に1~2回の頻度だということだけ。
しかし、これのお陰でチョッパーは怖がっているし、いつか爆発するんではないか俺も冷や冷やしているのだ。
「なあ、サンジ。ゾロのあれ、なにしてんだろうな」
「さあな、植物の考えることはわかんねぇよ」
ナミロビンフランキーも同様でルフィも特に何も言わない。
気にしているのは俺とチョッパーだけだが気になるものは気になるのだ。
「気になるんなら聞いてみれば良いんじゃねーか?」
「おっかねーから嫌だ」
「そういうこった。ほっとけほっとけ」
今日もゾロはマスト下のベンチで眠るブルックの側に寄り添っている。
やはり気になるので横目でちらちら観察していると何回目かのチラ見でゾロと目があった。
慌てて目をそらしたが、ゾロはじっと此方をみている。
観念してそちらを向くとちょいちょいっと手招きされた。
「ウソップ」
「ゾゾゾゾゾロくん別に気になるとかそういうことではないのだよただちょっと何してんのかなーって思っただけでーーヒィ!!」
刀を差し出されて慌てて体を庇う。
しかし、いつまで待っても衝撃はこず、そろそろと目を開けるとゾロが刀を差し出した姿勢で固まっていた。
「えっと...ゾロさん?」
「見てみろ」
促されて差し出された刀をまじまじと観察する。
刀は秋水。
やはり名刀。鞘や鯉口などに施された意匠は刀に詳しくないウソップでも素晴らしいと解る。きっと刃も同様に美しいのだろう。
否、そんなことではない。ゾロが見せたかったものはもっと一目で気づくほど解りやすい異常だ。
「なんか...震えてません?」
ゾロの手の中の秋水はカタカタと小刻みに震えている。ゾロが揺らしているわけではない。完全に秋水自身が震えている。
「...なんで?」
「さあな」
確かこれはリューマものだったはずだ。しかし、ゾロがリューマを倒したことで、リューマの体は燃え尽き、ブルックの影は元通りになった。もう、この刀が反応するのはゾロしかいないはずである。
では、何に反応しているのか。
ブルックの方に視線を向けるが特に異常はない。バイオリンを抱いて安らかな顔で眠っている。悪夢を見たりしている様子はない。
「たまにこうなる。原因は俺にも解らん」
「ええ...。大丈夫なのかよそれ」
「大丈夫だろ。ーーただ、ブルックには言うなよ」
そういってブルックを見つめる目は常にないほど優しかった。