昼食後の昼下がり。各々が好き勝手過ごすこの時間にブルックは例によって演奏をして過ごしていた。
冬島が近いのか少し肌寒いが降り注ぐ陽気は暖かい。外壁に座って釣りをしていたウソップとルフィの二人組はとっくの昔に夢の世界へ旅立っており、当てられたのか欠伸をしているメンバーも多い。
ならば、エレキよりかはバイオリンが良いかと思い、バイオリンケースを開ける。
「少し乾燥ぎみですね...」
次しまうときは保湿剤をいれよう。
松ヤニを塗って弓を滑らすと、澄んだ音が空気を震わせ、響いて溶け込むように消えた。
チューニングを済ませればあとは心の赴くままに楽を操る。
こんな昼下がりは穏やかな曲が良い。言うならば、寒い冬で冷えた身体を暖めてくれる日差しのような、柔らかく包み込んでくれる毛布のような穏やかな曲。
いつの間にかルフィウソップは元よりチョッパーとナミまで昼寝に移行している。
ヨホ、と小さく笑って目を伏せた。
年相応ではない強さや賢しさなため忘れられがちなだけで、彼らはまだ子供だ。
寝顔はあどけなく、仲間としての贔屓目やうんと年が離れていることを除いても彼らはとても可愛らしいと思う。
願わくば、この穏やかな時間が長く続いてほしいものである。
一番線に弓をあて、すい、と引く。
微かに手元に違和感を感じた瞬間、
バツンッ!
「ヨホッ!?」
跳ね上がった弦が頬骨をかすり、アフロに引っかかる。
慌てて周囲の様子を確認するが、起こしてはいないようで安心した。
アフロから弦を外す。毛が絡まっていて少し外すのに難儀した。
そろそろ替え時だとは思っていたが、乾燥により、思ったより劣化が進んでいたらしい。
お陰でテンションは駄々下がりだ。
しかも、微かに擦ったところがひりつく。皮膚があれば完全に裂けていただろう。皮膚ないけど。
「どうした」
「すみません。起こしてしまいましたか」
「いや、少し前から起きてた
─それ、どうした」
彼が指差す先は弦の切れたバイオリン。
合点がいき、ぷらぷら揺れる弦の先を摘まむ。
「ヨホホ、切れちゃいました。
そろそろ変え時だとは思ってましたが、思ったより劣化が進んでいたようです」
「治んのか、それ」
「ええ、ええ、大丈夫です。弦を変えれば元通りですよ」
ロッカーから替えの弦を取り出し、もとの弦を取り除く。
珍しくついてきた剣士は手元を興味深そうに見つめている。
手早くテールピースに通し、ペグに巻き付け嵌めていく。
ペグを回しながら軽く弦を弾き、チューニングしていく。
「…手際がいいな」
「ヨホ、何十年もやってたら慣れますよ」
立ち上がり、くるりと一回り。
す、と弓を引けばいつもと同じ柔らかなバイオリンが響き渡る。
「さて、仕切り直しです。ーーゾロさん、リクエストはありますか?」
予想外だったのかぱちくりとひとつ瞬きをした剣士は少し考えて、よく眠れるやつ、とリクエストした。