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    kinnkokkk555

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    kinnkokkk555

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    ブルックにバイオリンの弦を替えてほしくて書いた話

    昼食後の昼下がり。各々が好き勝手過ごすこの時間にブルックは例によって演奏をして過ごしていた。
    冬島が近いのか少し肌寒いが降り注ぐ陽気は暖かい。外壁に座って釣りをしていたウソップとルフィの二人組はとっくの昔に夢の世界へ旅立っており、当てられたのか欠伸をしているメンバーも多い。
    ならば、エレキよりかはバイオリンが良いかと思い、バイオリンケースを開ける。




    「少し乾燥ぎみですね...」




    次しまうときは保湿剤をいれよう。
    松ヤニを塗って弓を滑らすと、澄んだ音が空気を震わせ、響いて溶け込むように消えた。
    チューニングを済ませればあとは心の赴くままに楽を操る。
    こんな昼下がりは穏やかな曲が良い。言うならば、寒い冬で冷えた身体を暖めてくれる日差しのような、柔らかく包み込んでくれる毛布のような穏やかな曲。
    いつの間にかルフィウソップは元よりチョッパーとナミまで昼寝に移行している。

    ヨホ、と小さく笑って目を伏せた。
    年相応ではない強さや賢しさなため忘れられがちなだけで、彼らはまだ子供だ。
    寝顔はあどけなく、仲間としての贔屓目やうんと年が離れていることを除いても彼らはとても可愛らしいと思う。
    願わくば、この穏やかな時間が長く続いてほしいものである。

    一番線に弓をあて、すい、と引く。
    微かに手元に違和感を感じた瞬間、



    バツンッ!

    「ヨホッ!?」



    跳ね上がった弦が頬骨をかすり、アフロに引っかかる。
    慌てて周囲の様子を確認するが、起こしてはいないようで安心した。

    アフロから弦を外す。毛が絡まっていて少し外すのに難儀した。

    そろそろ替え時だとは思っていたが、乾燥により、思ったより劣化が進んでいたらしい。
    お陰でテンションは駄々下がりだ。

    しかも、微かに擦ったところがひりつく。皮膚があれば完全に裂けていただろう。皮膚ないけど。



    「どうした」

    「すみません。起こしてしまいましたか」

    「いや、少し前から起きてた
    ─それ、どうした」




    彼が指差す先は弦の切れたバイオリン。
    合点がいき、ぷらぷら揺れる弦の先を摘まむ。




    「ヨホホ、切れちゃいました。
    そろそろ変え時だとは思ってましたが、思ったより劣化が進んでいたようです」

    「治んのか、それ」

    「ええ、ええ、大丈夫です。弦を変えれば元通りですよ」





    ロッカーから替えの弦を取り出し、もとの弦を取り除く。
    珍しくついてきた剣士は手元を興味深そうに見つめている。
    手早くテールピースに通し、ペグに巻き付け嵌めていく。
    ペグを回しながら軽く弦を弾き、チューニングしていく。



    「…手際がいいな」

    「ヨホ、何十年もやってたら慣れますよ」



    立ち上がり、くるりと一回り。
    す、と弓を引けばいつもと同じ柔らかなバイオリンが響き渡る。





    「さて、仕切り直しです。ーーゾロさん、リクエストはありますか?」




    予想外だったのかぱちくりとひとつ瞬きをした剣士は少し考えて、よく眠れるやつ、とリクエストした。
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    akira_luce

    DONE七夕の時にあげた丹穹。

    星核の力を使い果たし機能を停止(眠りについた)した穹。そんな穹を救うために丹恒は数多の星に足を運び彼を救う方法を探した。
    しかしどれだけ経っても救う手立ては見つからない。時間の流れは残酷で、丹恒の記憶の中から少しづつ穹の声がこぼれ落ちていく。
    遂に穹の声が思い出せなくなった頃、ある星で条件が整った特別な日に願い事をすると願いが叶うという伝承を聞いた丹恒は、その星の人々から笹を譲り受け目覚めぬ穹の傍に飾ることにした。その日が来るまで短冊に願いを込めていく丹恒。
    そしてその日は来た。流星群とその星では百年ぶりの晴天の七夕。星々の逢瀬が叶う日。

    ───声が聞きたい。名前を呼んで欲しい。目覚めて欲しい。……叶うなら、また一緒に旅をしたい。

    ささやかな祈りのような願いを胸に秘めた丹恒の瞳から涙がこぼれ、穹の頬の落ちる。
    その時、穹の瞼が震えゆっくりと開かれていくのを丹恒は見た。
    一番星のように煌めく金色が丹恒を見つめると、丹恒の瞳から涙が溢れる。
    それは悲しみからではなく大切な人に再び逢えたことへの喜びの涙だった。
    「丹恒」と名前を呼ぶ声が心に染み込んでいく。温かく、懐かしく、愛おしい声…。


    ずっと聞こえなかった記憶の中の声も、今は鮮明に聴こえる。
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