今日は愛しの恋人が帰省から帰ってくる日「まとまった休みが取れたから実家に顔出して来るねェ」
そう告げられてからまだ数日しか経っていないのに、随分前の出来事に思える。
「ウム!ゆっくりしてくるといいよ!」
そう笑顔で見送った。
そこからの数日間はなんとも言い難い空虚感に襲われることが多かった。
大好きなオムライスを食べていても、
「次は違うのにしたらァ?」
と眉間に皺を寄せながら突っ込んでくれる君はいない
家に帰っても、笑顔で
「おかえり」
と言って口付けてくれる君はいない。
一緒のベッドに入って、
「ヒロくんは赤ちゃん体温だよねェ」
なんて言って触れ合う君はいない。
何をしても心が満たされない。
おかしいな、昔から1人は慣れているはずだったのに
君の存在は僕のなかでこんなにも大きくなっていたんだね。
『今日は新作のフラぺを飲んだよォ』と可愛い自撮りとともにメッセージが送られてきた。
SNSに載せたものとは違う写真
恋人の可愛い行動に顔をほころばせながら、返信をする
『君を直接感じたいよ』
何度もそう送ろうとした。
でも今頃家族水入らずの時間を過ごしているだろう
最近まとまった休みが取れず久しぶりの帰省だ。
僕のことは気にせずゆっくりして欲しい。
『可愛い写真ありがとう。僕もそれを飲んだみたいよ。』
本心をグッとこらえ返信をする。
『おやすみ』を言い合った後、そっと画面を閉じて眠りについた。
今日は愛しの恋人が帰省から帰ってくる日。
「駅まで迎えに行く」と申し出たが、「ヒロくんは大人しくお家で待ってて!」と言われてしまった。
先程最寄り駅に着いたと連絡が来たから、そろそろチャイムが鳴る頃だ。
ピンポーン
家に音が響き渡る
ろくにインターホンも確認せず玄関へ走る
「おかえり!藍良!」
そのままの勢いで藍良に抱きつく
「ちょっとォ、いきなり抱きついてきたら危ないでしょ!」とか「おれじゃなかったらどうするつもりだったわけェ?」とか色々文句を言いながらも後ろ手に玄関の扉を閉め、僕の背中に手を回す。
肩に頭を埋めてぐりぐりしたり、背中を摩ったり
離れてた分を補うように藍良を堪能する。
「いつからヒロくんはバブちゃんになっちゃったのかなァ」
「僕がそのバブちゃん、とやらになるのは藍良の前だけだよ」
「当たり前でしょォ……ねぇヒロくん、おれに会いたかった?」
「ウム、もう藍良が足りないよ…」
「ふふふ、なにそれェ…でもおれもヒロくん不足かも。今夜はいっぱい満たしてねェ」
僕達は数日ぶりの口付けを交わした。