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    radhissyu

    @radhissyu DQ4勇シンカプものガンガン描きたい熱をこちらで発散。
    マイ勇シン小説↓ネタの創作もあるよ!
    https://www.pixiv.net/novel/series/1542878
    というかベースがマイ勇シンだよ!

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    radhissyu

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    アリ→勇。マイ設定勇シン前提。ポイピク一字下げできない?

    アリーナ姫の引っ掛かり faith番外編アリーナ姫の引っ掛かり / faith 番外編



    晴天の空の下、街から少し離れた場所にある草原に風が吹き抜けていた。ちらほらと生える程度の樹木があり、岩が地面から顔を出している。
    そこへ、格闘でぶつかり合う音が響く。レイとアリーナが格闘術の鍛錬を行なっていた。

    武闘家であるアリーナは格闘術が専門であるが、勇者は──剣を主とした武器を用いて戦う者である。それでも格闘術をも磨きたいと考えていたレイは、時々アリーナと鍛錬を積んでいるのである。

    「やあっ!」
    アリーナの脚が鋭い弧を描いてレイの頭部を目掛けて横に薙ぐ。
    レイは左腕を振り上げ顔のすぐ近くにてそれを受け止めた。
    「ぐっ!!」
    ドスンという重い衝撃が、受けた前腕の外側で爆発する。ビリビリとしたしびれ様の感覚も伴っている。これは本気の一撃だ。負けるか!

    レイが気合を入れ直すも、蹴りを受け止められたと察知したアリーナはすぐに飛び退き次の動きに移っていた。レイに拳の嵐を浴びせる。その俊敏ながらも矢で撃ち抜くような連打にレイは防御の一択を強いられた。

    レイも拳での殴打はアリーナにある程度対応できるくらいの技術はあったが、勝っているとは言えない。そして連続して打つスピードにおいては確実にアリーナの方が上である。
    こうなったら!
    ほんの一瞬、嵐のペースが落ちた隙を狙い、アリーナの前腕部をがしと掴む。そしてぐるんと捻った。
    「っ!!」
    アリーナの表情に苦悶が走る。
    「はあっ!!」
    そのまま持ち上げ跳ねる兎を御するようにぶんと空中で一回しした。
    遠心力にアリーナの大きくない身体が引っ張られるのも利用して、レイは掴んだ腕を近くの岩に向かって放り投げた。
    ドカッ、と勢いよくアリーナの身体が岩にぶつかる。崩れたところの岩肌が見えた。
    「……った…たたた……」
    草原にべしゃりと落ちたアリーナは、ぶつけた肩や腰をさすりながら起き上がった。

    「ん、今日は俺が勝てたかな」
    「うーー、くやっしい……っ」


    :::::

    「ありがとうございました」
    武道の鍛錬後の挨拶をお互い終えて、タオルで流れる汗を拭き、水を飲む。

    「ねえ、お願いなんだけど、さっきの怪我、治してもらってもいい?」
    「わかった。俺でいいなら」
    いつもなら鍛錬の後の傷はクリフトに治癒してもらうところを、今日はなんとなくレイに治してもらいたい気がして、アリーナは彼に頼むことにした。

    「ベホイミ」
    木陰に座り、レイが回復呪文を唱えると、アリーナの身体が淡く光り出す。アリーナは目を閉じて呪文に身を委ねていた。とても気持ちいい。それに…

    「レイの回復呪文は…なんだか、…優しい…」
    「え?そ、そうか??自分ではよくわかんないけど…」
    「優しいわ。なんでかしらね?」
    レイは意外な誉められ方をして戸惑いつつも、悪くはない気分だった。関係あるかはわからないな、としつつ、言った。
    「人間が……好きだから?」


    頭の中で、今日の鍛錬の動きをアリーナは振り返っていた。
    「レイは、投げ技が得意なのね」
    「体格の差だな。俺もそこそこの速度では動けるけどアリーナや本職の武闘家ほどのスピードはないから、それ以外で自分の得意なものを作らないとな。長所を伸ばす。同じ格闘術でも人によって違う。才能の違い」
    回復を続けながら、レイは朗らかな表情で返答した。

    「長所かー。格闘術って無闇に動いてパンチすればいいわけじゃないもんね。レイと戦う時には、捕まらないようにしなきゃ」
    「捕まえたら投げ飛ばすからな」
    お互いに笑い合う。

    「レイは格闘術を習ったことがあったの?」
    「ちょっとだけ」
    暮らしていた村にいた頃から、レイは格闘術も少し習っていた。実際それを外で運用したこともある。店での客の争いを止めたことがあるのだ。
    「武器を持ってない時もないとは言えないし、あと武器での攻撃は、大怪我しやすいから。格闘なら手加減もしやすい。できて損することはない」

    アリーナは仲間内で格闘術の話ができるのをとても嬉しく思っていた。クリフトやブライにはそこまでの知識がないし、仮に知識があったとしても、実感を持ってアリーナと話すには力不足だ。


    「ところでさ、念のため聞くけど。治すのほんとに俺で良かったのか?」
    いつもはクリフトが治しているのにな、との疑問をストレートに尋ねる。

    「クリフトはアリーナを治すために待ってるんじゃないか?」
    そういえばなんとなくレイに頼んでしまったけど、なんで私頼んだのかな。自分でもよくわからない。
    アリーナはレイの問いかけに応答しようと、思い当たる理由らしい要素を探った。
    あ、もしかして、これ?

    「クリフトは回復してる時説教が多いのよ。無茶をなさらないでください、やりすぎは逆効果です、とか。わかってるわよ。私だってバカじゃないのに。もっと信じてくれてもよくない?」
    思い浮かんだのでこう答えたが、この理由は答えとして真実ではないということをアリーナは自覚していない。

    「信用はしてるんだろうけど、そことは別の意味で心配なんだろ」
    クリフトの気持ちはわかるよ、とレイは付け足した。
    「レイの回復は傷を治すことに専念してくれるじゃない。なんとなく、実際に効きも良い気がする。私、レイに回復してもらう方がいいわ」
    アリーナはむくれたように言う。

    「回復を誉めてくれるのは嬉しいけど…」
    レイは苦笑いでつぶやく。
    「いやあ…さすがにクリフトに悪いな」
    「なんで悪いのよ。私はレイの回復の方がいいって素直に言っただけ…」

    「…ほら」
    「あっ」
    街の方から、見覚えのある緑の服と帽子を身につけた人物がやってくるのが見えたのだ。そろそろ二人の修行が終わるだろうと、回復のためにやってきたクリフトである。

    「姫さま!レイ!もう終わったんですか?」
    息を弾ませながらクリフトが到着して、声をかける。
    「うん、終わったわ」
    「さ、お怪我を治しますよ!」
    クリフトは腕まくりまでして張り切って回復への意気込みを見せる。
    「今日はもう、もがっ」
    アリーナの口をレイの手が塞いだ。
    「今日は軽めの鍛錬だったんだ。回復が必要なほど怪我してない。気持ちだけもらっとくよ、クリフト」
    「そうでしたか!わかりました」
    と言いながら、彼はまだ弾みのある息を整えることに集中した。

    咄嗟に嘘をついて、クリフトの気遣いを潰さないようにしたレイが、アリーナから手を離す。
    「(何するのよ!)」
    アリーナは小声でレイに抗議した。
    「(いや、あの意気込み見たら、俺が回復しちゃったのやっぱりクリフトに悪かった気がして)」
    レイも小声で言う。
    「(だからってそこまでかしこまる必要ある?レイが回復役になることだってフツーにあるじゃない)」
    「(それはそうなんだけどさ)」

    クリフトのアリーナへの気持ちを知っているレイとしては、相手がショックを受けるかもしれず言う理由もないから言わない、というスタンスをとりたかったのだ。
    回復を頼まれた時に「いつものようにクリフトに回復してもらえ」と返すのも、なんだかな…。って、あったもんな。

    「どうしたんです?お二人とも」
    クリフトのきょとんとした声かけにレイとアリーナは揃ってばっとクリフトの方を見た。
    「何でもない、それよりさ」
    レイはさくっと否定して話題をそらす。
    「クリフト、また今度、回復呪文について色々教えて欲しいんだ」
    「回復についてですか?いいですよ!レイは勉強熱心ですねえ。この熱心さ、姫さまも見習って頂きたいです」
    「むー」
    「座学も大事なのですよ、姫さま」

    クリフトはレイやアリーナと同世代で、普段は喜怒哀楽も抑えることなく出すような年相応の青年だが、時にまるで長年生きた教師の様な振る舞いをすることがある。神官としての立場と、生来の頭の良さとがそうさせるのだろう。とはいえ、堅物というわけでもない。バランスが常に取れている人物だ。

    クリフトの息も落ち着いてきたところで、彼も木陰に腰を下ろす。
    三人が浴びる秋の空気は冷涼で、ほてった身体を休ませてくれる。

    「今日は出番がありませんでしたが、神官として私はいつでも皆さんのお役に立ちますよ!」
    手でガッツポーズを作って、クリフトは自信をみなぎらせてみせた。
    「皆さんの命は私が預かってますから」
    「それじゃ誘拐犯かなんかの台詞じゃないの!」
    大真面目に言ったつもりが、アリーナとレイは二人で大笑いしている。
    「ちょ、ちょっと変な言い回しをしてしまいましたが!」
    クリフトもつられて自分の言ったことに笑いが漏れてしまったが、続ける。
    「戦いで皆さんが怪我に負けずスムーズに動けるかは私の働きにかかっています。ミネアさんとともに頑張りますよ」

    「さすがだなー。俺も頑張るよ」
    「うん、レイも回復使えるんだもんね」
    アリーナがレイの回復呪文のアピールをする。よほど先程のレイの回復呪文が効いたのだろう。

    「レイは腕力もあるし攻撃呪文も使えるんですから、我々に回復を任せておいて、攻撃を頑張ってくれる方がいいのでは。しかしレイ、あなたは回復呪文を出来るだけ習得したいと頑張りますね。なぜです?」
    クリフトの言葉を受けて、何かを思い出したのかレイの顔にうっすらと陰りがさしたが、すぐに持ち直した。

    「それは……。みんな…生きてて欲しくて」



    レイが旅立つ前、生まれ育った村が魔物の襲撃に遭って壊滅したということは以前話してくれた、とクリフトとアリーナは回想していた。
    やはりその出来事はレイにとってとても大きなものだったのだなと、二人は静かに聞き入っていた。

    「ただ、回復呪文を熱心に勉強し始めたのは村を出る前からだったよ」
    旅立ち前に村を抜け出た先で店の客同士の争いが起きた時、目の前で怪我人が出ても手当てができなかったからだ。勇者であるなし関係なく、力のない自分は嫌だったのだ。その頃から。
    「それが旅立ったらますます強まったって感じかな。戦闘の連続だからな」

    ここまで話したことで、ある気持ちが芽生えていたことに、レイは気づいた。以前のことを語る機会になった時、付随する出来事のことも脳裏には再浮上するものだ。
    自らの心に次なる段階が生まれたのだ。

    …そうだ。まだあのことまではここにいる二人にはもちろん、まだ仲間には誰にも言ってなかった…。
    話をしてしまおうか。今なら話せる気がする。

    意を決して、レイは二人に真剣な眼差しを向けた。

    「二人に聞いてほしいことがある。あとでまた他のみんなにも話そうと思う」


    クリフトとアリーナは少し驚いた。が、レイのことだからと、同様の真剣な眼差しで迎える。

    「俺の育った村が…俺を狙って襲撃にあった話はしたよな」
    「うん」「はい」

    「その時に」
    一瞬詰まりかけた。大きく息を吐いて、続ける。

    「俺の身代わりになった幼なじみがいたんだ」

    強い風が吹き抜けた。なびく三人の髪の下で、クリフトとアリーナの表情が強張ったのが、レイにもありありと伝わってきた。それでも、目を逸らさない。

    「幼なじみが……身代わ…り?」
    「それは…。そんな、初めて知りました…」

    衝撃から正気に帰ってきた二人が、痛ましいという言葉の代わりに大きな息をつきながら、ようやくそれだけを口にできた。

    レイは村の襲撃の際自分の身代わりになり命を救ってくれた幼なじみ──シンシアのことを、初めて仲間に吐露した。
    村を出るまでずっと長く一緒に過ごしてきたこと、さまざまな思い出があること、一緒に旅に出ようと約束していたこと、その約束は幻になってしまったことを。


    「襲われたことも、シンシアのことも、木こりのおやじさんの力を借りて、俺の中でエンドールに出てくるくらいまでには一つ区切りがついてたことではある」

    勇者の村が魔物に襲われた、という話は旅立ってすぐ訪れたブランカのみならず旅先での世界中のあちらこちらで噂になっていて、仲間たちからも尋ねられたことで、話す機会ができていた。
    ただし、シンシアのことについては、レイはずっと話そうとはしなかった。

    「シンシアのことまで言ってしまうと、みんなにもっと心配かけるだろ」
    村を襲われたことを話す際も極力冷静に話をしたのだが、トルネコを始めとして仲間たちは非常に親身にレイを気遣ってくれたのだ。ある者は涙し、ある者はレイの背中をさすり…

    気持ちはとても嬉しく温かったのだが、心配をかけるのはレイの本意ではなかった。旅立ち直後の木こりの家で、ぐちゃぐちゃになった感情は癒してきたのだ。

    「だから、あえてそこまで言う必要もないなと」
    空を見上げて、レイは続けた。

    「でも、言っちゃったよ。ああ、みんなにも知ってもらいたくなったのかもしれない。俺のこと」
    「レイ…」

    聞く者の心にレイの気持ちが溶け込むように、少しの間沈黙の時間が流れた。

    「…なんだよ、二人ともそんな顔しないでくれよ。そろそろ街へ戻ろうか。日が暮れちゃうぞ」
    立ち上がって、レイは身体についた草と土をはらう。
    その顔は、いつものレイのものだった。


    ::::

    その夜。アリーナは宿屋の食堂でぼんやりと昼間のレイの話を反芻していた。

    アリーナが両手で持ったカップの中の温かいミルクが、ずしりと存在感を見せている。お茶や水のように透明ではないので、アリーナ自身の顔はそこに映ってはいなかった。どのような表情をしているか、彼女は自分では見えない。

    「ねえクリフト」
    「はい」

    円卓の、90度隣の席にて本を読んでいたクリフトは、主君が呼ぶと顔を上げた。

    「昼間の話のことなんだけど、どうしてレイはシンシアさんのこと、今まで黙ってたんだろう…」
    どうして、の理由はレイ本人が言った通りなのだが、アリーナはそれを頭ではわかりつつも、どこかで何かの感情がもやもやとしていた。

    クリフトは本を閉じ、わきに置いた。
    「姫さま…。それは仕方のないことです。そのようなことまでやすやすと口にはできない気持ち、私にはわかります。本人も言っていましたが、区切りがつき、時間も経ったことで、私たちに話してくれたのでしょう」

    円卓の中央に置かれたランプの火が、ジジジと音を立てた。

    「彼は村の人々にとても愛されて育ってきたのが伺えます。その中でも、シンシアさんは人となりをお互い知り尽くし、心を通わせられる相手だったのでしょう」

    アリーナの顔から視線を外して、クリフトは言った。
    「彼にはそれだけ特別に大事な人だったのですよ、彼女が」

    ……。大事な人…。


    アリーナは自分の心臓がどくん、どくんと音を立てているのをはっきりと自覚していた。

    アリーナたちが仲間としてレイと合流したのは、ミントスの街にて、病に倒れたクリフトが回復した頃のことである。

    レイが勇者だと知って、「勇者とはきっと豪傑と言わんばかりのいかつい人なのだろう」などとイメージしていたアリーナの勇者像が吹き飛んだのである。

    力強さも感じさせつつ、爽やかな振る舞いと声色でアリーナに近づいてきて、握手のために右手を差し出して言った。

    『パデキアをとりに行った洞窟でもすでにお会いしましたが…。改めてよろしくお願いします、姫さま』
    それを受けたアリーナの口から即出たのが次の言葉だ。
    『敬語禁止。"姫さま"も禁止。アリーナって呼んで』
    後ろで、クリフトとブライが飛び上がりそうなほど驚いていたが、意に介さない。
    『え』
    『いいからそうして』
    他の仲間にももちろん気さくに名前で呼んで欲しいのだが、特にこの人にはそう呼んでもらいたい、と思った。

    『…わかったよ。…よろしく、アリーナ!』
    握手を交わしたアリーナの顔が満面の笑顔になる。
    『うん、よろしくね!』

    その時は勇者と姫の出会いだ!おとぎ話みたいだ!なんて囃し立てる人がいたっけ。
    そう言われて、さすがに鈍めのアリーナもその意味がわかり、全力で否定したものなのだが。


    …私、おかしい。
    なんで、こんな気持ちになるの?

    …どうしてシンシアさんのことを話すレイを思い出すと辛いの?


    レイが大変な事態に遭っていたことについての衝撃、レイへの労りの気持ち。それ以外の感情を、アリーナはうっすら抱えていた。

    …こんな気持ち、クリフトには言えない。
    あの話を聞いた後で不謹慎な気もして、言えない。
    よくわからないけど、言えない…。


    「姫さま?」
    「! あ、ごめん」
    カップのミルクがぬるくなってきている。気分を変えたくて、アリーナは一口飲んだ。
    「レイは明日、シンシアさんの話を他の皆さんにもするそうですよ。…私たちのことを、信頼してくれたのでしょうね、レイは」
    嬉しそうに、クリフトが言った。

    「クリフトは、レイってどう思う?」
    なぜかクリフトに聞いてみたくなって、アリーナは問いかけた。

    「そうですね…。強くて、優しくて、人思いで…」
    『どう思う?』という唐突な姫の質問の意味をクリフトは正確に噛み砕く。
    「会うまでは勇者とはどんな人物だろうかと思っていましたが、私は彼が勇者で良かったと思っていますよ」
    「そうよね!」
    「姫さまも同じお考えですか?」
    「うん、うん」

    アリーナはにこにこ笑った。
    「クリフトもそう思ってるって、なんだかすごく嬉しいわ!」
    二人とも、彼のことがまず人間として好きなのだ。


    …私の、この気持ちの正体はまだよくわからない。
    でも、レイと仲間として過ごせることがすごく嬉しい。それでいいじゃない。
    余計なこと考えるのは、やめよう。

    「姫さま、そろそろお休みになってはいかがです?」
    「あ、ほんとに夜遅くなってきたわね。そうね」
    ミルクを飲み干し、洗い場へ持っていき、スタッフにごちそうさまでしたと声をかける。


    「お茶の種類はよくわからないけど、明日の朝食での飲みものは濃いめのストレートの紅茶にしようかしら」

    すきっと、目が覚めるような。
    気持ちを新たにできるような。

    「そんなご無理なさらなくとも…苦いですよ。いつものように甘めのミルクティーでよろしいのでは?」
    「むー」

    …でも、無理しないのも悪くないか。


    「明日の気分で、決めるわ。おやすみ、クリフト」



    (了)
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