「…………」
八月。深夜二時。ねっとりと湿った空気に、じっとりと汗ばむ肌。どうにも寝付けなくて、布団から体を起こす。向かいのベッドを覗くと、こんな部屋でもすやすやとよく眠っている同居人の顔が見えた。しかし、こころなしか、少し寝苦しそうだ。
「……ひそ…くん、ひそかくん」
寝起きで舌もよく回っていない。独り言にも聞こえるその呟きは、空に漂って消えてしまった。
「密くん……密くん」
なんとか気付いてもらおうと名前を呼びながら、柵越しに頭をぽんぽんと叩く。
「……ん………何………」
絞り出すような声。もぞもぞと寝返りを打って、薄いバスタオルに顔を埋めてしまった。
「どうにも寝苦しい夜だね、密くん」
「…………」
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