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    m_h_skyblue

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    進捗という名の執筆中一部分。あたまがわるいです。

    道満と刑部姫「ンンンンン……これはまた……」
     あんぐりと口を開けたまま、道満は目を丸くしてあたりを見回した。
     床にうずたかく積まれた本やダンボール箱、季節外れとしかいいようがないこたつ、派手な絵が描かれた貼紙に大量の人形、食べかけのまま放置されているピザ。そして一際異彩を放つ謎の賽銭箱。
     初めて訪れた刑部姫の部屋は、これが本当に白鷺城の城化物の住まいかと呆けてしまいそうなほどのとんでもなさであった。鍵も結界もなかったので勝手に入ってしまったが、なんだか見てはいけないものを見てしまったような気がして、ぞわぞわとした寒気と同時に妙な興奮すら覚えてしまう。
     こたつに置かれたパソコンに映っている絵はなんだろう。壁に張られた横断幕らしきものも気になる。少しくらい見て回ってもいいだろうか、そもそもいくらでも侵入できる状態にしているのが悪いのだし――
    「ンン?」
     そんな中ふと目に留まったのは、こたつ布団に埋もれるように置かれている……いや、隠されていると思しきひとつの箱だった。
     のそりと部屋に上がり込み、近付いてまじまじと眺めてみる。そこかしこに積まれている他の箱と同様、それなりに大きい、けれど何の変哲もないダンボール箱だ。引っ張り出して持ち上げてみれば意外なほど軽い。しかし何かしらが入ってはいるらしく、小さく揺するとごそごそとくぐもった音が聞こえた。
     中身は一体なんなのだろう。
     どれ、と軽い気持ちで――別に何かの企みだとか、秘密を暴いてやろうなどという意図は本当に一切なかった――道満は箱を抱えなおすと蓋を持ち上げ、ひょいと中を覗き込んだ。
    「…………おやおやぁ……」
     苦笑のような感嘆のような。ぽかんと半開きになった口から、そんなぼんやりとした声がこぼれ出る。
     驚いたというよりは、反応に困った、というべきか。勝手に覗いておいてなんだと言われそうだが、絶句するしかないものを見てしまったのだから仕方があるまい。
     何せ箱の中に入っていたのは、色も大きさも千差万別、けれど総じて大層いかがわしい形状をした、張型の数々だったのだ。
     なんとはなしにひとつを手に取ってみる。黒々と光る素材で作られた、逞しい男根を象った淫具。長さや太さは晴明の魔羅とさほど変わらない気がするが、幹の部分の凹凸や強調されたエラの張りを見るに、刺激も圧迫感もこちらの方がかなり強そうだ。
     この部屋にあるということは刑部姫の持ち物なのだろう。だが、道満の知る彼女とこの淫具がどうにも上手く結びつかない。人は見かけによらないとはいうけれど、細身で柔弱な刑部姫がこんな凶悪なもので楽しんでいるとは到底思えなかった。人並み以上の体躯を誇る道満ですら、晴明のものを受け入れただけで中がいっぱいになってしまうほどなのに。
     考えこみながらしげしげと巨大な張型を観察していると、プシュ、と部屋の扉が開閉する音がした。

    「っあああぁぁぁぁあーーーー!!!」

     刹那、絹を裂くような絶叫が部屋に響き渡る。
     振り向けば、扉を背にしてこちらを指差し、真っ青な顔で身を震わせている刑部姫の姿がそこにあった。
    「あぁ刑部姫殿、お戻りで」
    「いやいやいやいやなんで道摩法師がここにいるの? っていうか何してんの!? はっ、ガサ入れ! ガサ入れか!? わたし、厨房から勝手にカップ麺とかお菓子持ってきて蓄えたりしてないよほんとだよ!!」
    「いえ別に聞いておりませんが……」
    「じゃあなによぉ~!!」
     ふぅふぅと毛を逆立てているのをどうにか宥め、かくかくしかじかと事情を説明すると刑部姫はようやく落ち着いたようだった。少々むくれたような顔をしつつも、清少納言から返却された同人誌をおとなしく受け取り、小さく座り込んでもそもそ中身を検め始める。
    「法師がいた理由はわかったけどさ、やっぱり乙女の部屋に勝手に入るのは感心しないかな~。まぁ鍵かけてなかったわたしも悪いからそこはもういいけど」
    「そうですねぇ……ところで刑部姫殿、こちらなのですが……」
    「え? ……あー、それ? 今度の新刊の資料だけど」
     これについては何かないのか、と箱に入った淫具を示すと、刑部姫は恥じるでも慌てるでもなくあっさりとそう言い放った。表情にも声音にも誤魔化しの気配は感じられない。どうやら隠されていると思ったのは道満の勘違いで、こたつに半ば埋もれていたのも、作業の最中にすぐ手が届く場所だからというだけのことらしい。楽しむ云々以前の問題で、そもそも使ってすらいなかったわけだ。
     ちら、と再び箱の中に目をやる。
     ごろごろと重なり転がるいくつもの男根たち。改めて見ても本当に猥雑としかいいようがない光景だ。更に先ほどは気付かなかったが、球が幾つも連なった紐やらポンプの付いた吸盤やらつるりとしたU字型の器具やら、張型の他にも面妖なものがごちゃごちゃと入っているではないか。
     晴明の他に男も女も知らず、未だ性的なことに疎い道満には用途すらよくわからないものばかりだ。ただ、どれも気持ちよくなれるものなのだろうな、とは思う。おそらく、だけれど。
     はぁ、と息を吐いたのは半ば無意識だった。身体の芯が、奥底が、甘ったるい熱を帯びてむずむずと疼き出す。それを抑えるべく腹をひと撫でし、道満はこっそりと袈裟を握り締めた。
    「……あの、刑部姫殿」
    「なーに? もう用事終わったよね? そしたらそろそろ帰ってくれないかなぁ……」
     じっとりとした紅色の瞳が睨むようにこちらを見据える。それには気付かぬふりをして、道満は視線を空に泳がせながらぼそりと低く呟いた。
    「この……資料とやらは、どちらで手に入るので?」

    *****

    最終的に晴道がおもちゃ使ってセックスする話になります(えがお)
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    nicola731

    DOODLE「罪深き墓前まで」
    思いつきの時代物パロ晴道。多分この後二人で共謀して旦那を始末します。
     晴明の兄が妻を娶ったのは彼が十五の時だった。付き合いのある旧家の長子で、美しいことで評判だった。まだ十八になったばかりだった。晴明の幼馴染だった。
     晴明は義姉になる前まで兄の結婚相手を「道満」と呼んでいた。義姉になるまで兄の結婚相手を抱いていた。去年の盆に宴会があり、その裏で二人は体を繋げた。お互い初めての相手だった。晴明にとっては初恋だった。
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     晴明は兄が何処か勝ち誇ったような顔をして自分を見ていることに気付いた。兄が自分を打ち負かしたいがためだけに、道満を妻に迎えたのだとすぐに理解した。殺してやろうかと思った。
     道満は家庭に入ると頗る良妻で、よく躾けられた奥様になった。夫の父母に気に入られ、夫の床屋政談にも美しい笑みを浮かべたまま付き合った。晴明が「義姉さん」と呼んでも笑み 1027