彼のネクタイ彼女のルージュ 狡噛と花城がパーティーに潜入捜査した。いつもは俺と須郷や、俺と狡噛の組み合わせなのに、どうしても男女カップルでないといけない集まりだったので司令塔の花城が手を挙げたのだが、仕事が終わってバンに戻って来た二人は、どうしても他人同士には見えなかった。狡噛は太い首を花城が見立てたネクタイで締めていて、花城はいつもより濃い色をした赤いルージュを唇に引いていた。まつ毛も長く伸びて、胸元には何重にも重ねられたネックレスがある。腕には宝石の埋め込まれた(実は盗聴器である)ブレスレットがあり、狡噛のカフスも盗聴器になっている。二人が側に立っていることで干渉しはしないか心配だったがそうはならなかった。今はただ、顔のいい男と女が狭苦しい空間にいる。
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