暖簾に腕押しとはまさにこのこと。女はム、とした顔でソファに寝転び脚を組む彼を見上げた。彼というのはこの家の先輩ペットたるニョンの事である。
彼は本日も趣味であるマリファナをやっていた。ニョンの体を蝕む煙は甘い香りがして、一応近づくなと言われてはいるものの一緒にいるとなんだかふわふわするような心地がする。それはニョンの近くにいるからなのか、副流煙(マリファナでも副流煙と呼ぶかは不明であるが)のせいなのかは分からなかった。
ニョンと女の関係性が、ただの先輩と後輩でなくなったのは数か月前のこと。家族(特にルーサー)とおいしい食べ物、そしてティッシュ以外に興味を持たない様子が、女にはとても優しいように見えた。それは彼の怠惰がもたらす平和主義からくる無関心のせいなので、あながち間違いでもないし正解でもない。
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