夏っぽい錆義を書こうとした 新緑の田園を真っ直ぐに突っ切る、白い畦道が何処までも続いていた。歩き始めてたったの一里ほどだと言うのに、随分と景色が変わる物だ。
麓の町での用を済ませ帰路についたのは、もう日が傾き始めた頃だった。先生に言いつけられた仕事は、本来なら半刻ほどで済む物だったのだが、なにぶん不慣れな土地であったため、随分と時間を要してしまった。急ぎでは無いのだが少々不甲斐ない。
緩みかけた風呂敷の結び目を解き、背負い直してきつく結ぶ。この荷は大して重くはない。せいぜいが乾物や薬、小物の類だからだ。それよりも、帯に挟み込んだがま口巾着の中で、今朝よりも増えてしまった小銭がチャリチャリと揺れるのが気になった。
「もし、生活に必要なものがあれば、これで買ってきなさい」
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