目を覚ました羽獣の囀りがあちらこちらで疎らに聞こえてきたのと同時に、誰かが起きる気配がした。丁度顔を物音の方に向けて寝ていたようで、薄く目を開けると起きてきた奴──ムリナールの後ろ姿が見えた。
俺が目を覚ましたのには気付いていないようで、ムリナールは己の剣を携えてこちらに背を向けたまま何処かへ向かっていた。今すぐ起き上がって着いて行っても良かったが、何となく尾行してやりたくなって、あいつの背中が小さくなり始めてから起き上がった。尾行すると言っても、野営地として選んだこの場所は森から少し離れた拓けた場所で、身を隠しつつ尾行するには遮蔽物が少ない。クランタは耳が良い上にあのムリナールのことだ、こちらが後を尾け始めたことには気付いているだろう。
登ってきた陽の光が辺りを照らしていて、ぼんやりと地面や周囲の輪郭を浮かび上がらせている。光を反射する金髪や尾が動く度に水面が揺らめくように穏やかに煌めく。あいつの光はいつ見てもどの光よりも目が奪われる輝きだと思う。
やがてムリナールの足が止まり、くるりとこちらに向き直した。
「な、俺にも教えちゃくれねえか。」
「そりゃまあ、この荒野でやってくんなら荒っぽい技でもやってけるけど、お前の隣に居るんならお前の動きを理解しておいた方がいいだろ?」