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    7nanatsu8

    twst創作生徒であそぶ人です。地雷の方はさようなら…( ◜ᴗ◝)
    一次創作のあれこれもアップします!

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    7nanatsu8

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    鴨居百とたのしい仲間()の小話第二弾。カシロさん、メヅルさん、オツルさん、アンバイさんが出てきます。(刺青男のモブもいます)

    ##四季会

    鴨居百の百物語 ようこそ四季会へ! 「暦」。それは四季会の組織を四つに分けた際の余りや端くれに近い存在であり、分かりやすく表現するならば「なんでも屋」。
    四季会に入会したらば先ずは身元引受け人と証人の両者と面談し、推薦を得て各組織に所属する事になる。



    「じゃあせーので、な。せーの、」
    「「暦」」

    今日の昼飯何にする?みたいな気軽さで、俺を挟んで座る二人の男はそう言った。
    因みに今俺は車の後部座席に押し込まれ、右にカシロさん、左にカシロさんの相棒だという「アイ」さんに挟まれている。二人とも笑っちゃうくらい怖い見た目をしているが、とにかくいい匂いがする。カシロさんに拾われてから二日経っているので(なんかよく分からないけどホテルに泊まらせてもらった)、流石に俺からゲロの匂いはしない。
    しかしまだ普通にヤクザは怖いので、俺は硬いぬいぐるみみたいになって二人の間に挟まれていた。

    「やっぱり暦だよな。先ずは裏社会のお勉強から」
    「呑気な野郎だな、お前は...あーあ、俺の仕事場見学させてやりたいんだけどなー」
    「愛出の仕事風景なんか見たらモモちゃん泡吹いて倒れるぞ」
    「つか全然喋らねえじゃん、モモちゃん。生きてる?」
    「ハイ...」
    「ハハ。怖がらせるなよ愛出」
    「こんなん俺息してるだけでモモちゃん殺せちゃうんじゃないの」

    アイさんはそう言って笑う。
    アイさんが笑うと、彼の右頬の傷跡が歪んだ。車に乗り込む前に挨拶をした時しか彼の顔を見られていないが、アイさんの顔には大きな傷跡があった。火傷なのか、裂傷なのか。その判別すら怪しい程大きな傷で、ジロジロ見るのも怖かったので今はじっと自分の膝ばかり見ている。
    俺もヤクザになったから、いつかアイさんみたいな大きな傷を負うんだろうか。
    いや、多分傷跡が残る程度で長生きできるような幸運な人生は送れまい。ヤクザから逃げて別のヤクザに捕まる様な悪運に恵まれているんだ、近い将来ナイフで一突きされてポックリ死ぬんだろうな......我ながら納得いく。
    不謹慎な妄想をする俺と、黙りの俺に飽きてしりとりを始めるヤクザ二人を乗せて車は走る。
    目的地は四季会本拠地。
    下っ端は建物の名前を知る権利が無いらしく、カシロさんは「えーっと…遠足に行く感じの気持ちでいいよ」と言ってくれた。


    「じゃあ俺が身元引受け人で」
    「あー、じゃ俺が証人で」
    「ハイハイ。あんたらが拾い物たぁ、珍しいね」
    「コイツ、エトの下っ端とサツから手前の足だけで逃げ切ったんですよ。夏には向かないにしても、構成員としての度胸は一丁前でしょう」
    「俺も見たかったなあ、血ゲボ」
    「アンタぁしょっちゅう見てるでしょうが」

    待って、待って欲しい。
    俺は今、事務所みたいな所のソファに座らされて、右手をカシロさんに、左手をアイさんに捕まれてそれぞれ二枚の書類に血判を捺されていた。
    机を挟んで向かい合う男は勿論初対面で、二人より幾分か老けたスキンヘッドの男だ。アメリカのレスラーみたいに大きな身体をしていて、むき出しの頭皮に悪魔か鬼か分からないけれど、とにかく恐ろしい刺青が入っている。刺青男の背後には二人人の若い男が立っていて、片方は暑そうなアウターを、もう片方はシックなスリーピーススーツを着ていた。男達は暇そうな・眠そうな顔をしていて、何ならスーツの男は完全に目を閉じていた。
    俺だけ。
    俺だけ、背後に宇宙を背負った猫みたいな顔をしていた。
    刺青男はその恐ろしい外見とは裏腹に、親しみやすい八百屋のおじさんみたいな話し方で俺に話しかけてきた。

    「鴨居、百さんね。俺ァ人事部のお兄さんだからね、宜しくね」
    「ハハァハ、ハイ」
    「おいおい何だ、ここに来るまでの車ン中で二人に虐められたんか」
    「イエッ」
    「はーい、愛出が虐めてました」
    「はァい、シュウが虐めてましたぁ」
    「アンタら新人いびるのやめなさいや、まだまだ水の違う子じゃないの」

    水が違う、とは、多分まだまだ一般人の常識が抜けていないとか覚悟が足りないとか、そういう意味だろう。ここに来るまでに何度かカシロさんからそういう話をされた。
    刺青男はそれから「ここに入ったら死ぬ以外抜けらんないの、悪いね」とか「人殺しとかした事無さそうだねえ、先ず人を殴った事あるかい?」とか色々怖い話をしていたが、正直よく覚えていない。とにかく全部の質問に「ハイ」と答えていたら、いつの間にか両サイドの二人に笑われていた。
    ヤクザって、こんなラフに加入できるもんなの??
    俺以外の雰囲気だけは朗らかな空間。不思議な感じだ...。

    「成程ね。エトさんとこの内情知っちまってるんじゃあ、一般人には戻れないねえ。エトさん、東の方じゃあ大分大きな組だから」
    「は、ハイ...」
    「ウチは四季会ってェ名前の組織だ。表向きも裏向きもねぇ、正真正銘クリーンな会社!ヤーさんなんて怖くて見たくもないですよってな組織だ。......『わかる』かい?」
    「ハイ」
    「......オマエさんが善人だろうが悪人だろうが、知ったこっちゃねえぞ?その辺、わかって、この夏代に着いてきたんだな?」
    「は、い」
    「......」
    「......」

    穏やか。話し方だけは、本当に穏やかだ。子守唄みたいだとさえ思える。でも、俺の首をぎりぎり締め上げる様な圧迫感を感じる。
    刺青男はそうしてじっと俺を見詰めていたが、やがて「ヨシ」と短く頷いた。

    「あ、いいんです?」

    俺の捺印が済んだ後も俺の手を揉んだり抓ったりして遊んでいたカシロさんが、刺青男にそう訊く。

    「銃もドスも握れんと見た。金も持っとらんし家族とも縁を切っとる上、敵対勢力の元下っ端ときたもんで、正直ウチで生かすにゃ難しい所だとは思っとったが......ま、この場でこーんなヤクザに囲まれて失禁せんだけの度胸は見受けた。夏代、アンタ、コイツどこへやる気よ?」
    「あー、モモちゃんまだ十七なんで一応暦に」
    「カーーーーー、聞いとらん聞いとらん、十七ぁ??アンタぁ二十歳つって申請出しとったろう!?」

    カシロさんは心底楽しそうに笑い、刺青男はこの場で初めて大声を上げた。因みにアイさんは「そうなの?」と言って俺を見る。
    確かに、言われてみれば未成年ってヤクザに入っていいんだろうか...。あんまり考えていなかった(何故なら生きることに必死だった)からカシロさんに拾われた時正直に十七歳だと言ったが、あちら側としてはあまりよろしく無いらしい。
    刺青男は「ハーーーーーッ」と深く深く溜息を吐いて太い指で目頭を揉んだ。

    「朝凪、アンタぁグルか」
    「まさか。俺がこんな破天荒野郎の片棒持つと思います?」
    「今までそうやって何遍二人して暴れて何遍俺に始末書書かせたよ...」
    「まあ四捨五入すれば二十歳ですから!ね、モモちゃん」
    「エッ」
    「ねっ」
    「あ、ハイ...」

    ハートが付きそうなくらい甘い声色で同意を求められたが、その表情を見るなり「首を縦に振らなければ殺される」と思って殆ど反射で頷いた。自己中心的な雰囲気は全く無いのだがこの男、ホイホイ自分の進めたいように話を進める気がある。無邪気と言うべきか、圧力の塊と言うべきか......。
    対するアイさんはカシロさんの暴挙に反応はするものの、過剰に煽ったり否定したりする訳では無いようだ。現に今も、さして動揺した様子も無く机の上に置かれたお盆から最中を勝手に取ってムシャムシャ食べている。マイペースな人なんだろうか。

    「一旦良しとしたんですから、もういいじゃないですか。役に立たなかったら俺が始末つけますんで」
    「世話するんはアンタじゃないでしょうが、暦に行くんなら先ずは冬に行かにゃあ。
    ねえ解(オツル)、アンタん所の仮眠所空いとる?」

    不意に刺青男が背後の男達に話しかける。
    振り返られた二人のうち、暗い顔の男がパッと視線を上げた。
    背丈は俺より少し上くらい。重たい前髪の奥からこちらを覗く目は細く深い穴みたいで、感情が読み取りにくい。
    暗い顔の男、オツルさんは刺青男と俺を交互に見遣った後、左隣に立つ、ずっと眠そうに目を閉じている一際背の高い男にちらりと視線を寄越しながら話した。

    「こいつが地面で寝ればベッドが空きますけど」
    「エッ?? 嘘でしょ解さん?」
    「うるせえな、寒い所は平気なんだろうがよ。現にこのクソ寒い時期でもバスタオルみたいな布団で寝てるし」
    「それは君が寒がりだから!僕の毛布をあげたんじゃないか!!」
    「あーあーうるせえ。という訳でベッド空きます、ハイ。ウチで引受けます」
    「解さん!!」

    背の高い男は、喋ると意外にも親しみやすそうな人だった。オツルさんの後輩なのか同僚なのか、随分とぞんざいな扱いをされている様だ。ヤクザにしては割とポップな内容のやり取りだな、と思った。あと彼は眠いのではなく糸目らしい。
    やだやだと大の大人が地団駄を踏んでいるが、オツルさんも刺青男も全く気にせず話を進めている。清々しい程のフル無視だ。

    「んじゃ、頼んだわ。
    ほしたら鴨居さん、よろしくねえ」
    「は、ハイ」
    「何か分からん事あったら夏代か解に聞きゃいいし、上の承諾無しに洗礼だぁ何だぁやって来る奴がおったらそこの塩梅(アンバイ)に言いやあ。『のばし』方教えて貰いな」
    「ハイ...」

    刺青男に指さされて、背の高い男が軽く会釈する。
    アンバイさんは「ひどいや」「これが人権がないってコト...」とぶつぶつ不満を垂れていて、あまり俺の入会をよく思っていない様だ。というか自分が床で寝なければいけない事とオツルさんにフルシカトを食らった事が嫌らしい。
    オツルさんが一番優しそうだなあ、と思った。だって言い方こそちょっと刺々しいけど新入りをさらっと受け入れてくれたし、刺青男やカシロさん、アイさんの様に怖い外見をしていないし...外見はあまりアテにならないかもだけど。今みたいにただ立っているだけではヤクザだと分からないくらい、威圧感の薄い人だったから。
    これからどこに行くか分からないけど、まぁオツルさんと一緒なら大丈夫かな〜。
    ヤクザに囲まれて思考回路が麻痺しつつある。だって左右にヤクザ、前にヤクザ、見渡せばヤクザだ。
    ぼんやりしていると、隣に座っていたカシロさんがポンと俺の膝を叩いた。

    「じゃ、またねモモちゃん。冬のお仕事は四季会一キツくてヤバくて誰もやりたがらないけど、君なら大丈夫だと信じてるよ!」
    「えっ」
    「えーっと、俺夏だし次仕事で会えるのは6月かな。まぁ、ちょくちょく顔見に行くから寂しくないよね」
    「えっ、えっ??」
    「愛出、行くぞー」
    「ン、これ食ってから」
    「え、カシロさん...?」

    カシロさんはあっさり立ち上がり、もう一度俺の頭をポンと叩いてからアイさんを連れて出て行ってしまった。
    刺青男も「ほいじゃーね」と分厚い手を振る。
    俺は理解が追いついていないまま、涼しい顔をしたオツルさんに首根っこを掴まれて連行されてしまった。




    「......解さん、本当にいいの?こんなメダカみたいなの育てるの?」
    「いーじゃん。僕は生き物育てるの好き」
    「そうやって解さんが拾ってきた生き物のお世話は全部僕がみる羽目になるでしょ!!」
    「うるせえなーもう」

    部屋を出て地下の駐車場へ向かう階段を降りる。その間俺は階数を見ることが許されなくて、「自分の靴見ときな」とオツルさんに言われたからずっと足元を見ながら階段を降りている。
    自分で歩けと言われたから今は自分の足で歩いているが、部屋から階段までの廊下はオツルさんに持ち上げられていた。文字通り、彼に首根っこを掴まれて完全に足が地面から離れた状態でぶらぶらと運搬されて来た。
    約十分間、彼は俺を片腕一本で軽々と持ち上げたのだ。
    あっ、一番ヤバい人かもしれない。
    俺はそう思ったが、手遅れらしい。

    「あ、あの」
    「うん」
    「冬の仕事って、俺、何すればいいんでしょう」
    「醤油運んで」
    「え」
    「醤油」
    「は、ハイ」

    拝啓、ここにはいないカシロさんへ。
    醤油って何の隠語ですか。


    後日、二十リットルの醤油を身一つで運ぶ事になるとは、この時想像もしていなかった。
    長生き、できるといいなぁ。
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    Replies from the creator

    recommended works

    inuki111

    MEMOぽいぴく開設したので、試しに以前メモした🐈‍⬛の恩返しパロ(kis→isg♀→na)を置きます
    ボツにしたネタの供養ができるのでありがたい…センシティブもここに置く予定

    🐈‍⬛の恩返しパロ絶対かわいい
    na様がisg♀ちゃんをお姫様抱っこして塔の階段を駆け上がるシーンが見たい…isg♀ちゃんがna様の顔をじっと見てから照れちゃうやつ…
    こういうふんわりした雰囲気のおとぎ話みたいなストーリー大
    🐈‍⬛の恩返しパロisg♀→女子サッカー部エース。お人好しで行動力のある女子高生。ある日の下校中、工事現場の前を通りかかると、猫が積荷の下敷きになりそうになっていたので、サッカーボールを蹴って落ちてきた積荷の進路をズラすという神技を披露。猫のもとに駆け寄って怪我がないか撫で回していると、その高貴な感じの猫は後ろ足2本でisgの前に立ち、何とぷにぷにの肉球で顎クイをしてきた。「気に入った、お前を猫の国の王妃に…この俺、ミヒャエル・カイザー様の妃にしてやろうじゃないか」といきなり流暢な人間の言葉(しかも助けられた癖に上から目線)で喋りだし、isgはトンチキな状況に目をぱちくりする。終いには「今晩、必ず迎えに行く」と言って優雅な足取りで去っていった。その晩、猫の使者たちがisgの家を訪れて猫の王国に連れて行こうとするも、「猫のお嫁さんにはなれない」とisgは断固拒否。すると翌日、猫耳の生えた美麗な外国人が玄関先に現れて…?
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