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    7nanatsu8

    twst創作生徒であそぶ人です。地雷の方はさようなら…( ◜ᴗ◝)
    一次創作のあれこれもアップします!

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    7nanatsu8

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    付き合う前の🍴👓小話。✺もいます。

    ##🍴👓

    手を繋ぐ癖「カラシのそれって、弟妹がいるから癖になってるの」

    きっかけはウニのその一言。何を言っているのかよく分からなかったので「あ"」と凄んで聞き返すと、「それ」と細っこい指でチマッと下を指さす。
    その指し示す先には、ウニの手とガッチリ繋がれた自分の手が。
    自分の手は同年代の男と比べて少し大きく頑丈だと思ってはいたが、こうして軟弱代表のウニの小魚みたいな手を握り込む様子をまじまじと見ると余計自分の手が大きく見えた。

    「これが何やねん」
    「いや、カラシ以外にあんまり手繋がれる事ないから......」
    「はぁ?」
    「カラシ、俺と歩く時たまーに自分から手繋ぐから......弟と妹が多いって前に言ってただろ。迷子にならないように手を繋ぐ癖がついてるのかなって思って」
    「あーー.........?」
    「どうしたの」

    言われて、首を捻る。
    そんな丁寧な事、したっけ。
    露骨に首を傾げた自分に、ウニもまた小さい頭をこてっと傾けた。

    「いやァ......手ェなんかアイツらと繋いだかいな」
    「え、薄情」
    「バカタレ。アイツら長女のざらめにばっか懐きよって、ワシと手ェ繋いだ事なんかあらへんぞ」
    「本当に薄情だった」

    ウニは引いた。こうして感情表現が豊かになったのは、きっと自分が同室になってから一年かけて食育からやり直したおかげであろう。多分。若干目元を引き攣らせた表情を見て、そういえば陸と海では色々と価値観が違うんだったなと思い出した。

    「迷子になっても一応サメの人魚やし、クジラやらイルカやらの人魚やったらワシの弟ら1匹でも普通に倒せるしな。何やったらワシの家系上雄より雌の方が強いさかい、迷子の心配なんか した事あらへんわ」
    「そんな......カラシみたいな凶暴な人魚に襲われたらどうするのさ」
    「妹のざらめと本気で喧嘩した事あるけどな、全身の皮剥がれる程度無傷の内っちゅうくらいズタボロいかれるど」
    「......」
    「その下のみりんとあまずにはギリ勝てたけど、アイツらワシより爪硬いさかい掻っ捌かれた肉戻るまで流石に時間掛かったわ」
    「......」
    「マ、そんな訳でワシぁ弟妹らと手ェ繋いだ事なんかあらへんねわ」

    1つ年下の妹、ざらめ。コイツは身内だろうが恩人だろうが、弟妹を脅かす存在に対して本当に一切の容赦が無い人魚だった。母譲りの強かな心と父譲りの聡明さを併せ持つ、美しい女。しかし一度牙を出すと相手の血が流れ尽くすまでその牙を納めない獰猛さを持っていた。
    そんな負け知らずのざらめは、無謀な喧嘩や度胸試しに明け暮れる自分を嫌い、弟妹達はざらめ側についた。因みに補足をしておくと、けっして無意味な喧嘩ばかりしていた訳ではない。あの薄暗く犯罪の匂いしかしない治安の悪い海域で、自分なりに家族を守ろうと足掻いた次第だ。
    まァそんな事はさて置き。
    とにかく、自分はお手本の様な兄貴では無かったので、別に家族と手を繋ぐ様な癖は無かった。

    「でも、じゃあ、何なんだろうね......。カラシって世話好きだけど、あんまり他人とベタベタする性格じゃないからさ。不自然だよね」
    「お前ワシの事何やと思っとんねん」
    「倫理観欠如暴力太郎」
    「どつき回したろか」







    『ーーおーい!!どこやーっ!!』
    『...あ、カラシサン。何してはるん』
    『わ!!お前どこ行っとってん!』
    『散歩してました』
    『嘘つけ!迷子なっとったんやろ!』
    『ちゃいますってば』

    切り立つ岩の間を縫うように泳いで探した先に、そいつはのんびりと揺蕩っていた。この辺りの海域の事なんてそう詳しく無いくせに1人でノコノコやって来て、薄暗い岩の森ですぐ迷子になってしまう鈍臭い人魚。
    年下だから俺より小さい体格だが、狭い岩場に尾鰭が挟まって動けなくなったら1人では抜けらないというのに、こいつはしょっちゅう1人でこの岩場にやって来ていた。
    広い外海と俺の故郷を隔てるこの岩の森へ、こんなに危険な場所へ、どうして懲りずに来るのだろうか…...。
    そいつはおれに咎められて、ツンと唇を尖らせてそっぽを向いた。
     
    『こない危ない所、1人で来たあかんって言うてるやろ』
    『ええやん、カラシサン来てくれるもん』
    『ワシが来んかったら死んでまうやろ!この辺サメも出るんやぞ』
    『ほなはよ出た方がええやん』
    『あ"ーーもう!!腹立つ!!』

    全く反省する様子がないそいつの前で頭を抱える。
    (......そうや、コイツ昔っから滅茶苦茶聞かん坊やった)

    『行くで、ジョエル。逸れんときゃあ』

    自然と、無意識に。俺はジョエルの手を掴んだ。
    まだ成長期の来ていないジョエルの手は小さくて、肉食魚の俺と違う彼の手はふにゃふにゃしていた。長い爪で彼の手を傷付けないように、でも離さないようにしっかりと握る。

    (............あ)
    (おまえやったか、ジョエル)

    それは夢の中で見た幼い頃の記憶。
    暗く濁った、愛おしい記憶であった。







    「......カラシ」
    「言うな。おどりゃいらん事言うたら半分にかち割って中身ほじくり出したるからな......」
    「ジャム作ってて塩と砂糖間違える事なんかある?」
    「ダーーーーー!!言うな!!!!」

    翌日。
    バロンが街のパン屋で大きなバケットを買ってきたので、折角だからジャムでも作ってやろうと思った。
    丁度サイエンス部の後輩から大量の自家製(部活動にかこつけて勝手に植物園で栽培させた)ブルーベリーを貰ってあったから、短時間で作れるブルーベリージャムを作ろうとしたのだ。
    鍋にブルーベリーを入れて水分が出るまで弱火で転がし、ふつふつ音がし出す頃に大量の砂糖を入れた。それから......確か硬すぎたから水を足して......煮詰めながらかきまぜ、レモンを数滴。
    手作りならではの出来たてホカホカのジャムをひとさじ掬い、隣で見ていたウニに試食させてやった。
    ウニは短い舌でぺとんとひと舐めして、

    『......黒い塩?』

    と。塩っぱすぎてひりつく舌をぴちぴち口の中で宥めながら、そう言ったのだ。
    適当に笑って自分も味見して、卒倒した。
    塩分過剰摂取で死ぬかと思った。毒物並みの劇物を摂取してしまったので、もんどり打ちながら蛇口を捻って口の中を洗った。
    なんでとかどうしてとかは一先ず後回しにして、目を白黒させるウニの首根っこを掴んで水を飲ませて......。
    と。
    それが約5分前の出来事。
    今はその劇物がローテーブルの上で行儀よくジャム瓶に入っており、自分とウニは劇物ジャムを挟んで向かい合っていた。
    ウニは備え付けの低いソファに腰掛けており、自分は何かに腰掛ける気分にもなれず、土足で歩き回る床に直接臀をつけて胡座をかいている。胡座と言うよりもつれた足を無理やり収めていると言うか、バランスが極端に悪い体勢。しっかり座る気力も失せ、ぐんにゃりと背を曲げて頭をローテーブルに転がしていた。
    まさか、自分が異様な匂いにすら気付かず鼻歌わ歌いながら鍋を掻き回していたとは。途中なんか硬いなと思って水を入れたが、そりゃ塩を入れたのだから水気や粘り気なんて出る筈がない。
    しかも失敗した物を意気揚々とウニに食わせてしまった。料理人の名折れである。

    「最近多くない、こういう失敗」
    「どつき回されたいんか」
    「先週もプリン作ろうとして茶碗蒸し作ったじゃん」
    「シバキ回す」
    「その前はハムに紐巻くの忘れてただの味付き茹で肉作ってたし」
    「引き摺り回す」
    「何作ろうとしたか知らないけどオーブンで炭作ってたじゃん」
    「マカロンやボケ」
    「バロンが炭マカロンで床に絵描いてたじゃん」
    「なんでアレワシも一緒くたにされて怒鳴られたんやろな......」
    「元凶だからね」
    「擦り下ろしたる」
    「まぁ、食べ方次第では食べられるんじゃないの」
    「アホか」
    「クリームチーズの脇にちょこっと塗るといけんこともないですよ」
    「わざわざそんな手間入り要らんわ」
    「まあまあいっぺん食うたらええやないですか」
    「あーやめやめ、捨て」

    顔を上げ、びしりと固まる。
    ウニの隣に陣取り、涼しい顔でバケットを頬張る男。
    ウニは一人分狭くなったソファの上で、いつもの様に色々諦めた表情をしてクリームチーズが入ったポットをネチネチと混ぜていた。
    いつの間にか勝手に入って来て勝手にバケットを切り勝手にクリームチーズを塗って勝手に食っていた男、ジョエルは、「ン、塩こいけど旨い」と言ってモリモリバケットを頬張る。

    「......いつから......」
    「ジョエルならカラシがドバドバ塩入れ始めた辺りから俺と一緒に見てたけど」
    「はあ?!?!」
    「いやー、カラシサンがクソ鈍で助かりましたわ。またおもろいもん見させてもろて」
    「お、こ......?!こ、殺す」
    「カラシってなんでかジョエルがすぐ近くにいてもあんまり気付かないよね」
    「アホなんスよ」
    「ダーーーーーッッ!!どつき回したらァ!!」
    「うぎゃッ!!」

    怒りと羞恥ととにかくムカムカする感情をそのままにジョエルに飛びかかる。体格はジョエルに負けるが、パワーは自分の方があるのでジョエルはソファから転がり落ちた。因みにウニはサッとソファから立ち上がって部屋の隅に移動している。
    俺はジョエルを引き摺り起こして表へ蹴り出してやろうと、揉み合いになりながらジョエルを引っ張る。

    「そういうのはどつく前に言わな意味無いやろ!」
    「じゃかあァしい!!表出ろボケ!!」
    「なんやとアホ!砂糖と塩の区別もつかんトンチキ!」
    「あ"?!?!」
    「......あ、カラシ、それ」
    「何やねんウニ後にせえ!」

    「それ、ジョエルにやってあげてた癖だったんだ」


    ウニは場の空気に合わない、独り言の様な話し方でそう言った。
    言われて、ジョエルと目が合う。向こうも一体何を言われたかわかっていない顔をしていた。

    「何がやねんな」
    「ほら、その手を繋ぐ癖。手首を掴めばいいのに、喧嘩の最中にもうっかり出るくらいだから......確かカラシとジョエルって幼馴染だよね」
    「......」
    「ま、仲良く喧嘩してね」



    それから、どうやってその場の喧嘩が収まったのかはよく覚えてない。
    ただタンコブを2つ3つ生やしたジョエルに「照れ隠しが乱暴すぎとちゃいますか」と恨み言を言われた事だけは覚えている。
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