『黄金の王ブバと平民イサ三』太陽のように燃え上がる髪、エメラルドグリーンの涼し気な瞳、男も女も魅了する黄金の甘いマスク、身体のいたる場所にちりばめられた金の装飾。
それを引き立たせる鍛え上げた肉体美。
誰が言ったか、黄金王ブレイバーン
彼が望めばどんな宝石だろうとも金銀だろうとも、珍しい果実だろうとも手に入る。
そんな奴になぜか男であり平民であるイサミが召喚された。
平民のイサミからして見れば
王に"城に来い"と言われれば答えは、頷き跪く肯定の動作しか許されないのだからまったくもって迷惑な話だ。
不敬なのを承知でせめてもの抵抗にとイサミは平伏せずに真っ直ぐに空っぽの王座を見つめ王を待つ。
瞬間、空気が変わった。
甘い香りが幻想の絨毯を柔らかに敷くように広がり、シャン、シャンと清らかな演舞を踊るような軽やかな音色。
そいつが入って来た瞬間、渇いた世界が水々しく潤い、渇きが癒され、全ての飢えが"それ"を見ているだけで満たされる
「良く来たなイサミ」
「……ぁ」
名指しで"来い"と呼ばれたのだから目の前の存在がイサミの名を知っているのは当たり前のことだが、そんな優しい言葉で表現できない程に目の前の存在は美しく巨大で尊大だった。
「私の"もの"になれイサミ」
「は?」
金銀、宝石を扱う商人に"これ"を譲れと言わんばかりの口調でそいつは言う。
「私は優しいのでもう一度言おうイサミ
私のブレイバーンの"もの"になれ」
目の前の男、ブレイバーンはニヤリと笑い白いパールのように小粒でキラキラと輝く宝石のような歯を微かに見せ、イサミに再度宣言する。
ブレイバーンを着飾る金の一部になれと
「……」
平民であるイサミには拒否権が無い。
ただ黙ってブレイバーンを睨むことしか許されない。
それはつまり、無言の肯定となる。
「ならば決まりだな……ルル、イサミに例の服を着せてあげるんだ」
「はい」
ルルと呼ばれた少女がいつからいたのかさえ気づかない程にイサミは自分がブレイバーンに魅了されていたことにようやく今になって気がつく。
そんなブレイバーンの魔手から逃れる為に首を左右に振り、正気に戻る。
せめてもの抵抗として、一切ブレイバーンと目を合わせることなくイサミはルルに連れられ、新しいイサミの部屋へと通された。
「私、ルルって言うの
よろしくねイサミ」
イサミの部屋のドアを閉じた瞬間、人形のようだったルルは子供らしく笑い改めて自己紹介をする
「ぁ……俺はイサミ……よろしくなルル」
一輪の小さな愛らしい花のようなルルにようやく息をつく。
「緊張するよね、ブレイバーンってすんごくハンサムだし
怒るとね、こう目を吊り上げてバーンって怒ってねとってもおっかないんだよ」
ルルが両手で自分の目頭を吊り上げ、ガオーと言ってみせてくれるから、あまりにも面白くてようやく頬が綻ぶ
「良かった、イサミ笑ってくれた
イサミずっとムッってしてて、ルル心配だったんだ」
「それは俺の真似か?」
「似てるでしょ?ルル、顔真似や声真似が得意なんだ!」
それでようやく肩の力が抜ける。
ルルは味方だと。
「はっ!ルルが最初にイサミとたくさんお喋りしてたらブレイバーン、悲しむかも」
「あんな奴、悲しませとけ
そんで、その涙を売って一儲けすれば良いんだ」
ルルがパッと両手を塞ぐ大げさな表現をしたことでここでは素でいて良いのだと察したイサミは毒づく。
「ブレイバーンの涙、ルルも見たことないからきっと高く売れる」
それでようやくお互いに声を出して笑い合った。
「なあ、これ本当に着なきゃ駄目か?」
「スッケスッケだね」
さて、そろそろ仕事に戻らなきゃルルでも怒られてしまうとひたすらお互いの身の上話をすれば自然と仲良くなれるもの
どうやら、ルルは子供の頃におじ様と慕うスペルビアと共にこの国に来て
ブレイバーンの目に止まったスペルビアはその手腕を買われ、見事発揮し、金銀宝石の流通に関わっているらしい。
ルルはブレイバーンの身の回りのお世話係となっていたが、これからはイサミのお世話係になるということ。
「……でも、ブレイバーン心配。
ルル達が一番古くて信頼できるのに
イサミに悪い虫が噛みつかないようにってブレイバーンなりにイサミのことを考えてる
……だから、外ではあんまりブレイバーンの悪口は言わないでね
それを聞いた悪い虫さん達が甘い果実に群がるようにブレイバーンを噛んじゃうかもしれないから……」
そんなルルの心からの願いといえどもあんな奴の言葉に"はいそうですか"と身も心も売るほどイサミはブレイバーンに堕ちてはいなかった。
どう見ても男をその気にさせるようなスケスケの上着、横から脚が露出するズボン。極めつけはスケスケ、ツルツルのシルクのパンツ。
隷属の首輪のような金のネックレスに腕輪に脚輪
贅沢を極めたこの服を売り飛ばすだけで一生、何もしなくても暮らせそうだった
「でも、これしないとイサミがブレイバーンのだって睨めないから危ないよ?」
「男なんだから自分の身は自分で守る」
「格好いい!イサミ格好いい!」
ピョンピョンとウサギのように飛び跳ねるルルを見て、金の首輪達はそのままに用意された衣裳のみを身につけ、再度、ブレイバーンの元に赴く。
「やはり似合っているなイサミ
……だが、私からの贈り物は気に入ってくれなかったようだな?
イサミは金よりも宝石が良かったか?」
ブレイバーンがパチンと指を鳴らすとイサミが見たことも無いような宝石がズラリと並んだ。
「さあ、イサミの好きな宝石を選んでくれ
私、自ら彫刻を施したものなどはどうだろうか?」
ブレイバーンが差し出す宝石を叩き落とし"おまえに隷属する意思は無い"と態度で示す。
「そうか、そうこなくてはなイサミ」
ブレイバーンの凶悪な笑みを見て、背筋にゾクゾクとした快楽が走る。
目から入り、脳に、指にじっくり甘いものを無理やり溶かして身体を満たして思わず跪ずきたくなる甘露。
味わえば魅了され、もっともっととだらしなく舌を伸ばしていつまでも床に這いつくばって伏せをしたくなる。
ゴクリと唾を飲みこみ、無理やり流しこまれたブレイバーンの感情を飲み干し、なんとかもう一度睨むとブレイバーンは面白そうに笑って玉座に座った。
「まあ良いだろう、イサミ
ここに座り私に侍ろ」
犬や猫などペットに躾をするようにブレイバーンは"ここに"と足でトントンと高そうな絨毯が敷かれた足元を示す。
イサミはせめてもの抵抗として、ブレイバーンから離れた階段の一番下に座り
"お望み通り、おまえのお膝元に座りましたよ"と睨むとまたブレイバーンは笑った。
「これは上手い!さすがだイサミ!
それでこそ私のイサミだ!」
"誰がおまえの"もの"になるかよ"とブレイバーンの声など聞こえないふりをしてひたすらに時間が経過することを祈った
ようやく月が登り、部屋への帰還が許されたイサミは次の難題へとぶち当たる。
「イサミ、身体の清め方知ってる?」
夜の手引き書を持ち、現れたルルは悪くない。
ルルは"仕事"でイサミの身の回りの世話をしているだけなのだから。
「……ああ、できる。知っている
だから心配はいらないさ、ルル」
「良かった!じゃあ、ブレイバーンにもそう伝えとくねー!
お休みイサミー!」
無垢で幼いルルを騙すのは心が痛むが
何が悲しくて夜の手引き書を読んで自分が食われる下ごしらえをするものかとルルから受け取った手引き書を屑籠へと捨て、ふかふかのベッドに飛び込む。
「こいつだけは良いな」
イサミがいくら背伸びしたったって買えない柔らかく甘い匂いがするふかふかベッド。
これだけは貰ってやると疲れてキスしたがる瞼をしっかりと閉じて眠った。
ゴソゴソと何かが動く気配で飛び起きる
「ようやく起きたかイサミ
私は優しいのでイサミが起きるまで待っていたんだぞ?」
誉めて!誉めて!と子供のように無邪気に笑いながらもイサミの両手を拘束するブレイバーンに頭痛がする。
「とにかく!離しやがれ!」
ここは自分のテリトリーだと覚えたイサミは遠慮無くブレイバーンの露出した腹筋やら男の急所があるだろう場所を蹴るがこの男、身体に鋼鉄でも仕込んでいるのかと思う程にブレイバーンを蹴るイサミの足の方が痛かった。
「元気があって良いなイサミ!
私の身体は鍛えていない所などないから好きなだけ蹴ると良い」
「ひぃっ」
ブレイバーンに足を捕まれ、ペロリと舐められ悲鳴が出る。
「きちんと足の指の間も綺麗にしなければいけないぞイサミ?」
「そんなところっ!舐めるなぁ"ぁ"!」
イサミの足の指と指の間をブレイバーンの綺麗な舌がチロチロと美味しそうにぬこぬこと水音を立てながら踊る光景があまりにも刺激的すぎて、嫌だ嫌だとうめきながらも気持ち良すぎてもっともっとと前が痛くなる程に勃起し、苦痛ではなく、快楽の涙を流してしまう。
「こちらは素直だなイサミ?」
「やめて、やめてくれ」
ブレイバーンの綺麗な指がイサミの赤く欲望で膨らんだものを美術品を触るように扱われ、そんな美しいものを汚したくないと制止を求める。