世田i谷ラブiストーリー「………なあ、飲みすぎだって」
旧道沿いの馴染みの居酒屋。生ビールから始まり、レモンサワー、日本酒とハイペースで飲みほしていく目の前の彼に声を掛けた。
「…うるせえ」
アルコールのせいか、赤みを帯びた頬と伏せた長い睫毛がやけに色っぽい。このままでは彼一人で帰れなくなってしまうだろう。お冷を頼み、なんとか飲ませようとするが中々言うことを聞いてくれない。
俺と、彼ーー伏黒恵は大学で出会った。最初の講義で隣に座った時は嫌な顔をされたが、今では隣にいるのが当たり前になっている。同じサークルに入り、まあまあ充実した大学生活を送っていると思う。単純なヤツだと言われるかもしれないが、俺は伏黒と一緒に居れるだけで幸せなのだ。飲みに来たのもこれが初めてではない。
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