やすひら出会い(一目惚れ編)アカギの偽物を立てて一儲けしてやろう。
そう思いついてから半年ほど経ったある日。
「白髪で目鼻立のいい青年を探して欲しい」と頼んでいたその筋の人間から連絡があった。
難しい依頼だったが随分と早く見つけられたものだと驚いたが、差し出された写真を見て更に驚いた。
写真に映るその男は、予想を上回る美しい顔立ちだった。
依頼通り、髪は真っ白だ。
髪型や服装は違うが、まさか本物なのではと期待を抱いたほどだ。
早速本人にコンタクトを取り、喫茶店で待ち合わせた。
自分は予定より少し早めに到着し、奥の席でタバコをふかす。
夕暮れ時、そこそこ賑わっていた店内は、その男の来店により一瞬で静まり返り、一拍置いてざわつきはじめた。
入り口に目を向けると、写真で見た通りの青年が白のピンストライプスーツに身を包み、白銀の髪はオールバックに決めて颯爽とこちらへ歩いてくるのが見えた。
背は思ったより高く、やはり何より、今までどうして過ごしてきたのか想像もつかないような、秀麗な顔立ちだった。
そいつはオレの近くで立ち止まり少し辺りを見回した。
うっかり見惚れていた。ハッとして軽く手をあげると、そいつは気づき、机を挟んだオレの前に腰掛けた。
店内の全ての視線を感じる。
「マジ…ばけもの…」
思わずタバコをもみ消し、口に手を当ててそう呟いてしまう。
あのアカギも今頃はこんな感じなのだろうかと頭の隅で考えた。
「あんたか……白髪の若い男を探してるってのは……」
そいつは少しムッとした表情でぶっきらぼうに切り出した。
中身は案外普通の男のようだ。
「何の用だか知らねえが…オレは毎日後を付け回されてあまりいい気分じゃねえんだよ」
「あ……ああ……すまん」
「あんた何者?まともそうには見えねえな」
そいつは切れ長の目を細めてじっとオレを見つめた。
「ああ…オレはちょっと……こういうもんだ」
この段階ではあまり出したくなかったが、オレはおもむろに刑事手帳を示した。
「えっ!?……ケーサツがオレに何の用……ですか」
思った通りそいつの表情は一気にこわばる。
これを出すと誰もがそういう反応をするものだ。
「安心しろ。別にお前が怪しいことをしたからとっ捕まえよう……とかって話じゃねえ」
「は……はあ…」
「少し協力してもらいたいことがあるんだ。嫌なら断ってくれればいい」