置き土産「あー…いてェ」
腹から流れ落ちる血液。ここまでの深手を負ったのはいつ以来だろう。後ろには血の道が出来ていた。
大人しく酒でも飲んで寝てた方が治りは早いが…それでも、確認したかった。
(あいつは生きているのだろうか)
おれを裏切った男。
おれが愛した男。
狂死郎…というのは偽名だったか。
(あいつのこと、結局何も知らなかったなァ)
今の自分を俯瞰してみると、何ともまァ滑稽だ。裏切った相手を、自分の命を削ってまで探している。その目的は…だたの安否確認。復讐しようなんざ思ってもない。
ただ、一目だけ。
最後にその姿を見たかった。
…おれを裏切ったことで、ちゃんと幸せになったのかを。
あちこち崩れているおれたちの城。
その中で一瞬、青色が見えた気がした。あいつの外套の色だ。
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