お題「祝福」 西暦二千年代前半東京の特異点だった。
都内とは思えない中世ヨーロッパ風の聖堂がマスターの道満の前にそびえている。優美にして荘厳。白亜の階段を上がればゴシック様式の双塔があり、その間に門のような扉。中央にそびえる白亜の尖塔は凜々しく、高く、青空の一点を穿っている。一歩足を踏み入れれば清浄な空気が満ちていて、心が洗われるようであり、また引き締まりもする。
今、厳かなはずの聖堂は喝采に揺れていた。
純白の衣装に身を包んだ若き二人が祭壇の前で口づけを交わしている。
婚姻の儀が行われていたのだ。
祭壇を囲むような半円のステンドグラスから差し込む光は神による奇跡のように美しく、磨き抜かれた大理石の床は揺らめく蝋燭の明かりを反射して歩ける水面のようだ。
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