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    turb_shirotae

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    晶くんの夢小説書こうと思ったのに気がついたらヒス晶♂になってたよ、という日記

     誰がかっこいいだとか、誰が優しいだとか。誰のことが好きだとか、誰が誰に告白しただとか、誰が誰に振られただとか、そんな話題でクラスはもちきりだった。
     そんな中でも私はどこか高みの見物だった。友達からの追及をのらりくらりとかわして、笑って誤魔化してやる。なんとなく、言いたくはなかったから。
     真木晶くん。ごくごく普通の男の子で、私の初恋の人。中学にあがって筆箱を忘れて困っていた私に色々貸してくれた親切な人。たったそれだけで恋に落ちるなんて馬鹿馬鹿しいと笑われるかもしれないけれど、そんな小さなきっかけで私は真木くんのことが好きになった。
     
     友達との恋バナに彼の名前は出てこない。厳密に言えば一度だけ出てきた。けれどすぐに「真木は良い人だけど、ちょっと無理かな」なんて誰かが笑い飛ばす。なんとなくムッとしてしまうけど、私はあえて何も言わない。彼の魅力は私だけが知っていればいいんだから。そんな小さな優越感を抱いて、彼女たちの恋バナに相槌を打った。

     そんな彼に思いを告げることはしなかった。真木くんの特別になりたいという感情も確かにあったけれど、同時に真木くんが特別を作るところは見たくなかったから。みんなの真木くんであってほしいという私の我儘だった。
     だから誰かが真木くん良いよねなんて言えば趣味が悪いと笑い飛ばしたし、その度に繊細な思春期の心は傷ついた。

    「中学卒業してから、何年経った?」
    「数えない方がいいよー」
     ガヤガヤと賑わうホテルのロビーに、私は居た。
     中学校の同窓会だなんて来たくもなかったけど、真木くんを一目見たいと思ってわざわざ来た。なんとなく面影の残ってる昔のクラスメイトにテキトーに挨拶をしながら私は周辺を見渡す。幹事に聞いたら真木くんも居るって言っていたから来てるはず。そう思って探せば、彼はすぐに見つかった。
     旧友と笑いながら何かを話している。大人になった彼はとてもかっこよくて、同時に穏やかで優しげな表情は変わっていなかった。けれどどこか雰囲気が違う気がする。昔はちょっと頼りない感じだったけど、今は信頼できる強さがある。そんな彼に私は胸をときめかせた。青春の淡い気持ちがゆっくりと蘇る。
    「真木くん」
     私は彼に話しかけた。久しぶり、と言えば彼も懐かしそうにしてくれて思わず舞い上がった。
     彼は今、彼女はいるのかな。もし居ないのであれば、昔素直になれなかったこの気持ちを伝えてもいいのかな。
     そうドキドキしながら当たり障りのない会話をする。
    「ねぇ真木くん、良かったら……」
     同窓会、一緒に抜け出さない?
     そう声をかけようとした瞬間、彼のスマートフォンが鳴った。真木くんはごめんね、と私に声をかけると電話に出る。一言二言言葉をかわして、彼は嬉しそうに笑った。
     同時に心臓が嫌な鼓動を刻みはじめた。見たことのない彼の笑顔になんだか嫌な予感がする。落ち着け、落ち着け、と私は必死に笑顔を作った。
    「ごめん、俺もう帰らなきゃ」
    「え……?」
    「約束してるんだ」
     彼はスマートフォンをカバンにしまう。私が戸惑っているうちにロビーの扉が開いた。
     金髪の綺麗な青年。私たちより少し年下だろうか、明らかに同窓会にやってきたとは思えない来客に私と真木くん以外は気が付かなかった。
    「晶様」
     青年は真木くんを呼んだ。真木くんも柔らかくその瞳を細めて彼を見つめる。そんな眼差し、見たことない。
    「迎えに来ましたよ。約束、したので」
    「ありがとうございます、ヒース」
     真木くんはカバンを抱え直して私に向き合う。
    「久しぶりに会えて良かった。またね」
     そんな彼を私は引き止めることができなかった。待って、と声をかけたくて、けれど言葉が出てこなくて。
     青年と一緒に立ち去る彼の背中をじっと見つめることしかできなかった。仲睦まじそうな二人の背中に私の心は自然と理解してしまう。――きっと、私の初恋は知らないうちに枯れてしまったのだろう。
    「……っ!」
     真木くんと一緒に歩いていた青年はドアを通った際に一瞬振り返った。視線があって思わず私は動揺する。
     彼の青い瞳が異常なほど冷たくて、恐ろしかった。
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