ヒースクリフは視線を感じた。それも、至近距離から二つ。
はじめは気にしないようにしていたが、やはりどうにも気になる。先程から目が滑って一切読めていない本を閉じてから、困ったように尋ねた。
「……何かあった?」
隣に座っていた晶がハッとする。その膝の上で同じくヒースクリフを見つめていた幼い少女が同じようにハッとしたのを見て、ヒースクリフはおかしくなった。見た目はブランシェットの血を感じさせるのに、晶にそっくりな反応を見せるのがなんだか不思議で。一人で抱えるには大きすぎるぐらいの幸福をヒースクリフは感じた。
「す、すみません。読書の邪魔でしたよね」
晶が謝ると、膝の上の少女は不思議そうに首を傾げた。そのまま無邪気にヒースクリフの膝の上へ移動しようとして、ヒースクリフは慌てて少女を抱えあげる。父親に抱き抱えられて少女は満足気に笑った。
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