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    hiromu_mix

    ちょっと使ってみようと思います。
    短めの文章はこっちに投げます。

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    hiromu_mix

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    アイスクリームパレット:ダブル♪
    チョコミント(媚薬 / 好き好き / 癖になる)
    洋梨(熟す / マグカップ / 愛情)

    うんと大きく伸びをして、徹夜明けで乾いた目を切島は瞬いた。窓の外、空に白雲が薄くたなびき、濃い青から薄い青まで、まるですべて種類の青色を使って描いたような空の色を見つめる。その窓の半分を隠すファットガムも、うう、と小さく呻くとデスクで背を伸ばした。
    「はあ、さすがに疲れたな」
    「っスね」
    「こっちはもうひと踏ん張りや」
    夜警中に発生した大きめの事件が二件、うち一件で薬物が押収された。その道の専門家であるファットガムはいま、警察から送られてくるデータを見ながら販売ルートや過去の事件との照らし合わせをやってるところだった。明日でもいいと言われたが、早く済ませたほうが事件解決につながるからと戻って来てからずっと、パソコンとにらめっこだ。
    切島はそんなファットガムの代わりに報告書類をまとめていて、今大体終わったところ。
    「そっちは?」
    「あとは先輩とファットにチェックしてもらえたら」
    「おおきに。こっち送っといて、チェックしとくわ」
    「了解っす」
    ふ、と切島は大きく息を吐く。ファットガムが、終わったんやし帰ってええよ、とまたパソコンに視線を戻しながら柔らかな声で言ったけれど、でも、本音を言うなら帰りたくない。なんて言ったら驚かれるだろうか。普通は帰りたいよな、俺、今日本当なら休暇だし。
    「……コーヒー淹れてきますよ」
    「無理せんでええよ、自分でやるし」
    「俺も飲みたいんで」
    席を立ち、給湯室に向かった。ファットガムの形を模したマグカップと、俺用の赤いマグカップを棚から出して、切島は湯沸かしポットのスイッチを入れた。ポットからはすぐに、しゅんしゅんと音が漏れ始める。その音を聞きながらファットガムのマグカップの、ふちに何気なく指を滑らせた。ここに彼の唇がいつも当たっていると思えば、とくん、と心臓が鳴る。
    こないだ久々に会った上鳴から、切島はファットガムが好きすぎだろ、と揶揄われた。好き好き大好き、と冗談めかして返事したが、心の奥に押し込め過ぎた恋心は、すっかり熟すどころか、そのうち腐敗し始めそうで怖いほどだ。いっそ腐ってしまえば捨てられるかもしれないけれど。
    徹夜でぼうっと霞がかったような思考回路。なんだか衝動的に切島は、その黄色いマグカップを持ち上げて、そろりと唇を寄せそうになって。ピピピと響いた電子音で我に返る。取り落としそうになり、慌ててキャッチ。サンプル品でもらったそのマグカップは、結局生産ラインに乗らなかったので世界でただ一つだ。勿体ない。ほっとして、シンクに置いて、両方にドリップパックをひっかけるとお湯を落とす。自分のは適当に、ファットガムのは丁寧に。コーヒーの鮮烈な香りを嗅いでいると、さっきの行為に後悔と罪悪感。アホか、勝手にマグカップにキスして間接キスとか、そんな卑怯なことで喜べるほど腐っちゃいねえ。落としきって、ドリップパックを外す。それから、ファットガムのほうには、ちょっと考えてからいつもより増やして角砂糖を5つ、俺は2つ。ミルクは俺だけ。茶色い液体を見下ろしながらふと思い立って、お菓子の籠から、封を切ってあったチョコレートの欠片を、ぽとんと落とした。これが媚薬かなんかで、ファットガムも俺のことを好きになったらいいのになんて、やっぱりどこまでも馬鹿なことを思った。


    「あ、美味い、チョコ入れたん?ええねこれ、なんとなく目も覚めるし、癖になる味やな」
    ファットガムがにこりと、目を細めてそう言っていたので。
    実は媚薬だったらどうしますか?と、緩んだ思考から零れそうになった言葉を、俺はぐっと飲みこんだ。
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