理性なんて蹴っ飛ばせ!どうしてこうなったのかっていう、記憶はどこか曖昧で。あんまり細かく考えたらいけないって、そう思ってるからだと思う。確かきっかけは酒のせい。酔った勢い。
それが、だらだらと続いているだけの関係だけど。それだけだと思いたくないのは、切島の勝手な願望だ。
大きな手に指を絡め、必死につないで、唇を合わせた。
切島が自分からそうすると、ファットガムはほんの少し、唇が触れるその手前くらいでいつも、少し戸惑うような顔をする。それが切島にはよく分からず、顔色を窺いながら舌先を伸ばせば、それが絡んだあたりでもうファットガムの表情から迷いが消えるから。大きな舌に翻弄され、息ができないような口付けを繰り返して互いに溶け合っていくだけの行為。
1989