今夜、まほろばで夜でも、蝉の声が煩い。
不意に目が覚めてしまったのは、エアコンのタイマーが切れた途端暑くなった室内のせいだろうか。切島は枕元に投げ出していた、エアコンのリモコンに手を伸ばし、設定をさらに低くしてスイッチを押した。ごう、と小さくため息をつくみたいに風を吐き出した後、エアコンは涼しい風を無音で流す。もう一度タイマーを二時間でセットして、これから朝までつけててもそう変わんねえな、と少しだけ思いつつ。目を伏せても、じわじわじわと外で鳴く蝉は、昼の喧騒がないせいか余計に騒がしく感じた。すっかり、頭がさえてしまった。
スマートフォンを見れば、2時を少し過ぎたところ。丑三つ時を怖がるガキではないので、眠れないならいっそ買い忘れてた明日の朝食を調達しに、近くのコンビニでも行こうかなって、切島はベッドから汗ばんだ身体を引きはがすように、ぽんと跳ねた。
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