「めでたしめでたし」のその先をだいたい、昔話の王子様とお姫様ってやつは、くっついたらめでたしめでたしで終わるので。
それ以降が本当にめでたしだったのかはわからないわけで。
「どうなのかなって、気になったことないっスか」
腕の中で、赤い髪をぴょこぴょこ揺らしながら切島がそう聞いてくるのを、話半分で豊満は頷いた。
ついさっきまで二人で映画を見ていた。話題作と言うので見てみたが、なんだか現実離れで若干消化不良だ。出てきた恋人たちは最後まで綺麗なまま、美しく話は終わった。今の切島の言葉は、ようはその流れで出てきたのだろう。
「気になったことはあんまないけど、でも、ほんま、それで終わりってことはないよな」
「ですよね」
むしろそっからっすよね、と。ことんと豊満の胸のあたりに後頭部を乗せて、自分を見上げてくる切島に微笑み返した。
「そうやなあ……確かに、そこからのほうが、いろいろあった気ィするわ」
「俺もそんな気がします」
ふふ、と切島が笑いだす。いろいろあった。けれど、それを笑い飛ばせるようになるくらい、俺たちは長い時間一緒に居たのだ。そろりと切島の前に腕を回せば、まるでそうするのが当たり前のように切島が豊満の腕を抱きしめて、身体を寄せてくる。
「お陰様で、俺はすっかり君の虜やけどな」
「ハハ、そりゃよかったっス」
俺もですよ、と囁く声が、先ほどより甘さを増した。愛玩動物にするように、太い指で顎の下を撫でたら甘えるように喉を鳴らされて、じわりと欲が沸いてくる。ちゅ、と髪に口付けて、よぉし、と豊満は切島の脚の下に腕を差し入れると抱き上げた。
「う、わわ」
「さ、美味い飯も食うたし、映画も見たし。休前日の夜の楽しみで、相応しいことがまだ、残っとるやろ?」
「ハハ、今日は早寝するんじゃなかったんスか」
そうだった、だから映画見ようなんて話になったのに。
「アカン、無理、もよおした」
「太志郎さんはいつも、我慢できませんよね」
するりと首に腕を回し、切島はそっと、耳朶に唇を寄せてくすくすと笑う。
「俺も……実は、準備しちゃってたので」
よろしくお願いします、と言われたら、頑張るしかない。
「めでたしめでたし」のその先も、俺たちはずっと、一緒に幸せのまま過ごせますように。
ひとつづつ、大事なものを積み重ねるように、生きていく。