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    hiromu_mix

    ちょっと使ってみようと思います。
    短めの文章はこっちに投げます。

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    hiromu_mix

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    オル相。
    元エクソシストな神父オルさん×人に紛れて生きる悪魔のザワ。
    というよく分かんないパロ。
    舞台は普通に日本なので現パロっぽい。個性無し世界。

    たぶらかしてよ夜空よりなお、暗い色を纏う男が住み着いていると聞いて、八木はその古びた教会までやって来た。
    そこは住宅街から少し外れた、どこか寂れた雰囲気の地域。秋晴れの空の下だと言うのに、その建物の周りはうっそうと木々が生い茂っていて薄暗い。手入れのされていない庭は、雑草と正体の分からない低木があちこちから無造作に生えていて、足の踏み場もないほどだ。それをかき分けて進めば、それなりに立派な教会が目の前に現れた。古びた、なんて体のいい言葉だ。これは廃墟同然、と言ったほうが正しいだろう。明らかに朽ちた外観。折れた十字架は微妙なバランスで屋根に刺さり、いつか落ちてきそうで怖い。こんなところに人が住めるのかと思いながら、とはいえ、司教より命を受け調査に当たることになった以上、司祭である八木に選択肢はない。
    蝶番の外れた扉を、半ば押し込むようにして扉を開ければ、ばたんとそれは倒れて崩れた。内部に太陽の光が差し込む。塵に反射して、キラキラとした光が舞った。足を踏み入れるのを躊躇したくなるほどの淀んだ空気を感じて、八木は奥にわだかまる闇に目を細めた。その闇はじっとそこに佇んでいたが、見る間にゆるゆると人の形を持ち、そして赤い光を宿した瞳を向けた。
    「――誰だ、あんた」
    「やあ、こんにちは」
    八木が声を掛ければ、怪訝そうな顔で彼はこちらを見つめた。黒くてぼさぼさの、少し癖のある髪。それを無造作に垂らしているので、八木の場所からでは彼の顔立ちはあまりよく見えなかった。黒一色の服は、彼の背後の闇に半ば溶け込んでいて、まるで顔だけ宙に浮いているようにも見える。薄い唇が歪んだ。
    「あんた、神父?」
    「よく分かるね」
    「分かりますよ」
    にい、と唇が横に広がる。意外にきれいな白い歯が見えた。
    「俺を殺しに来たんですか?」
    「さあ、どうだろうね」
    「そういう駆け引きは面倒なんで止めましょう」
    しゅる、と男の手から白い布のようなものが吹き出したかと思うと、それは八木を捉えるように飛んできた。素早く交わし、着地地点を読まれる前にとんと近くの椅子を蹴って軌道修正、椅子の脚がその布に絡むのを横目で見ながら、八木はぐっと間合いを詰めるように男に近付いた。塵がもうもうと舞うが構ってはいられない。とっさに動けなかったのだろう、ぎょっと目を見開いた彼の肩を掴み、床に押し倒す。
    だん、と重たい音が室内に響いた。崩れそうな協会は、それだけでパラパラと天井から砂のような屑が落ちてくる。八木は小さく舌打ちしながら、床の上に引き倒し、捉えた男を見下ろした。
    「さっきの、すごいね」
    「あ、んた」
    「うん、私、こう見えても元ナンバーワンのエクソシストなんだ」
    今はもう引退した身だったんだけど、と八木が微笑めば、男は悔し気ににらみつけてくる。
    「ここ、崩れそうだから場所、移動しようか」
    「は?……どこに」
    「君がこれ以上暴れないんなら、どこにでも行けるから」
    にこりと八木が微笑むと、男はしぶしぶと言った顔で両手を上げる。ひどく人間っぽい仕草だなあと思って、八木は少しだけ笑った。


    男は『相澤消太』と名乗った。
    「普通の名前だね」
    「はあ、そうですね」
    「でもさ。君、悪魔だよね?」
    そう言えば、男――相澤は困ったようにぼりぼりと頭を掻く。
    八木と相澤が外に出た途端、まるで見計らったようにガラガラと教会の中が崩れ落ちた。外側はまだある程度の外観を保っていたが、中はもう人が住めるような状態ではない。相澤は困ったような顔でそれを見つめ、ねぐらが無くなっちまった、とぼやいた。そこから移動し、まず話ができるならどこでもいいですよねとなぜかラブホテルに連れ込まれたのがついさっきの出来事だ。ぱっと見はホテルの一室と大差ないが、風呂とベッドがやたらとデカい。もちろん、八木はこんな場所に来たことはないのでソワソワしていたが,相澤は気にする様子もなく、そのベッドの上に胡坐をかき八木を見上げていた。八木はだいぶ背が高いので、立ったままでは相澤がやけに遠い。八木は改めて相澤の隣に座った。
    「私、さすがに間違えないと思うけど」
    「間違ってないですよ」
    悪魔です、一応、と相澤は苦笑した。彼の真っ黒な服装は、いかにも悪魔が纏いそうなマントでも礼装でもなく、本当にただ真っ黒なだけで部屋着のようなスウェットのトレーナーと黒いデニムだった。先ほど見えなかった顔を,まじまじと見る。日焼けとは無縁そうな白い肌。目つきは悪いが、整った顔立ちをしているからいっそ美男子かもしれないのに、なめらかな頬や顎には無精髭がちらほらあるせいで若干小汚く見える。角も爪も、尻尾も無くて、どこまでも人間のようだ。はあ、とため息を吐く仕草も人間臭い。
    あの協会にどれだけ住み着いていたのかは知らないが、とはいえ彼の目撃情報が出たのはここ半年以内の話。それまで人に紛れて生活してきたということだろう。
    「俺、悪さはしてないと思いますが」
    「うん、そうだね。別に君を捕まえろって言われたわけじゃないし」
    「は?ならあんた、何しに来たんです?」
    人のねぐらを潰しといて、と非難めいた口調で言われて、フハ、と八木は笑った。悪魔に怒られてしまった。
    「笑いごとじゃないんですが」
    「うん、ごめんね。ええとね、どっちかって言うと、君を捕まえたかったんじゃなくてあの協会を壊すことになったんで、立ち退いて欲しかったんだ」
    きょとんと相澤は目を丸くする。
    「たちのき……」
    「うん、住んでるのが悪魔かもっていわれてたから、念のため私が見に来たんだけど」
    「はあ、そうですか」
    ならまあ、いいです、と相澤は肩を竦める。
    「別に住むところを探しますんで」
    「ところで、なんであんなとこに住んでたの?協会好きな悪魔なの?」
    「違いますよ」
    むっと嫌そうな表情を浮かべ、相澤は首を振る。
    「前までは、普通のアパートとかで暮らしてましたけどね、10年も同じとこに住んでいれば怪しまれるんです、歳をとらないって」
    「あ、ああ」
    なるほど、と八木が頷けば、相澤は目を細めて自嘲するみたいに笑う。
    「もう、400年くらい生きてますからね……昔はそりゃ、人をたぶらかして地獄に落としたりもしましたが、自分の悪魔の格が上がっても別に良いことがあるわけじゃないんですよ。俺は出世したいタイプでもないんでね」
    人間に紛れ、人間に気を使って。悪魔の本分であるはずの行いを、自分にとって得がないからと切り捨てて。
    「ハハ、面白いね、君」
    八木はそう呟いていた。なんて興味深い悪魔だろう。
    「……こっちは真面目に話しているんですが」
    相澤がむっと鼻の上に皺を寄せたので、八木はごめんごめんと手を振った。
    「でも面白いよ、君みたいな悪魔に初めて会った」
    「はあ……でも」
    にやりと相澤が笑って八木を上目遣いに見つめる。さっき一度赤く光った瞳は今は黒い色をしてるが、その夜を溶かしたような目に妙な色香が漂う。
    「全部嘘かもしれませんよ?……これでも、悪魔なので」
    「うん……そうか」
    ああ、これはだめだ。飲んだことのない酒を、かっ喰らったように。目の前がくらくらした。八木は相澤の腰を掴み、ぐいと引き寄せる。
    「あ?」
    そのまま八木はベッドに寝転がり、腰の上を跨ぐようにして相澤を乗せる。がっちりと両手で腰をホールドすれば、相澤は簡単には逃げられない。自分の腰の上で、相澤は驚きに目を見開いていた。ああ、そんな顔すら可愛い。どうしよう、彼よりも強大な悪魔を相手にしたときも、美しく魅力的な悪魔に会った時だって、こんな風にはならなかったのに。
    「ちょ、あんた!?」
    「ねえ……せっかくこんな場所だしさ、私のこともたぶらかしてみてよ」
    「はあ!?なに言ってんだ、それに、あんた聖職者だろうが!」
    じたばたと相澤が暴れると、余計に腰を擦り付けているようになって。相澤の尻の下にある自身が、年甲斐もなく膨らんでいくのが分かる。相澤はさっと青ざめた。
    「ん、な、ぁ」
    「うん……さっきからずっと、君が可愛くて仕方がないんだ」
    もしかして、もうたぶらかすなにかをした?、と八木は呟いた。

    相澤はどうしたらいいか分からないという顔。けれど諦めたように一つ息を吐くと、なら仕方ないですねと身体を屈め、八木の唇に自分のそれを押し当てた。





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