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    あらいぜき

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    あらいぜき

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    6年目手紙読んで、もう幸せにするには結婚するしかないと思ってぇ……

    🔦誕生日おめでとう2025 誕生日パーティーもとっくにお開きになった夜10時。クリーチャーとセルヴェは特に何かする訳でもなく、そもそもどちらから誘った訳でもなく、セルヴェの自室で飲み直していた。
     夜の荘園はいつも通りしんとしている。にぎやかな誕生日パーティーは既に夢のようで、二人で飲むにしてはやけに豪華なオードブルと数切れのケーキだけが今日はパーティーがあったことを主張する。
     他愛のない会話の途中、クリーチャーはふと思い出した疑問を口にした。
    「今年は、た、誕生日のプレゼント、ないのか?」
     そういえば、セルヴェからプレゼントを貰っていない。職業柄か元々の性格かは分からないが、セルヴェは人にサプライズをしたり贈り物をするのが好きだ。パーティーの余興でマジックを披露していたが、まさかそれだけではあるまい。
     そう思って何気なく聞いてみただけだったのだが、セルヴェは飲みかけのワインをグラスの中でくるくると回すばかりで返答はない。
    「……私がいるだろう」
     ようやく口を開いたかと思えば、意味不明な答えが返ってきた。普段から婉曲的で遠回しな表現を好む奴だが、それにしたってあまりにも曖昧で何が言いたいのかさっぱりわからない。
    「『私がプレゼント♡』ってことか?」
    「そう思うならそれでもいいが、そうだな……明日も明後日も私がいる」
     ますます意味が分からない。ここは閉ざされた荘園だ。ゲームで脱出に成功しても荘園に戻される。ハンターから攻撃を受けたとしても、ゲームが終われば外傷は治る。外に出ることは叶わないが、代わりに命の危険もない。
     もしかしてプレゼントを用意していなかったことを今更思い出して、テキトーに誤魔化そうとしているのか?セルヴェに限ってそんなことは……いや、抜けてるところがあるからありえなくはないか。
    「な、何当たり前のこと言ってるんだ」
    「はは、当たり前か。……あー、少し待て」
     そう言うとセルヴェはワインを置いて立ち上がり、部屋に備え付けられたデスクの引き出しから何かを取り出した。戻ってきたセルヴェの手には小さな箱が握られている。
    「な、なんだ。プレゼント、用意してあったのか」
    「恋人の誕生日に何も用意しない訳がないだろう。クリーチャー、左手を貸してくれ」
    「ん」
    「ありがとう」
     先ほどの考えは杞憂だったようだ。言われた通りに片手を差し出す。セルヴェは小箱から何かを取り出すと、クリーチャーの手をそっと掴んだ。
    「……ほら、プレゼントだ。誕生日おめでとう」
     離された手をみれば、薬指に指輪がはめられている。銀色のリングに小さいながらもキラリと輝くダイヤ。決して派手なデザインではないが、安物ではないことは確かだ。
    「……は?お、おま、お前、これ、い、いくらするんだ?」
    「真っ先に気にするのが値段か?お前らしいと言えばらしいが……」
    「ち、違う!!」
     確かに値段も気になるのだが、そういうことではない。高級な指輪を、左手の薬指に。それは、つまり、
    「こ、こんな高そうな、ゆ、指輪なんて、ど、どう見ても、け、けっ、結婚指輪だろ!?」
    「そのつもりで用意したからな。給料3カ月分とはいかないが、それなりに高価なものだ」
     クリーチャーの焦りを知ってか知らずか、セルヴェはさらりと同意する。そしてやっぱり高いのか、コレ。
    「……ほ、本気で、いっ、言ってるのか?」
    「逆に聞くが、私が冗談でこんなことを言うと思うのか?」
    「お、思わない、が……」
     思わないから困るのだ。セルヴェが冗談でこんなことを――わざわざ結婚指輪を用意する訳がない。
    「言っただろう。『明日も明後日も私がいる』と」
    「それ、ぷ、プロポーズだったのか」
     言葉の意図を理解した途端、じわじわと全身が熱くなる。明日も、明後日も、これからもずっと、クリーチャーと一緒にいるつもりなのか。ずっとずっと一人ぼっちで、気味悪がられて、地位も名誉もない、瘦せぎすの男と一生を添い遂げるつもりなのか。
     駄目だ、顔も熱い。湯だった頭はぐるぐると同じ思考を繰り返していて、まともに働かない。口からは「あー」やら「うー」やら無意味な母音ばかりが漏れ出ている。
    「……すまない、困らせてしまったな。先ほどの言葉は忘れてくれ。その指輪はただの誕生日プレゼントだ。好きにするといい」
     話を逸らそうとワインに伸ばされかけたセルヴェの手を掴む。
    「い、一生、幸せに、してくれるんだろ」
     ここまでクリーチャーに期待させておいて、今更逃がすものか。
    「……まあ『当たり前』だと言われてしまったがな」
    「そ、それは……」
    「ふふ、意地が悪かったな。もう一度チャンスをくれないか」
     セルヴェはクリーチャーの手を両手で包みこむように握りなおす。手袋越しのはずの手は妙に熱い。なんだ、すました顔してたくせに、お前も照れていたんじゃないか!
    「明日も明後日も、これからもずっと私はお前の側にいる。クリーチャー、結婚しよう」
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