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    秘みつ。

    @himi210

    @himi210 小説 / 毎日更新12:00〜21:00 / 凪茨右茨ジひジ▼感想質問お気軽に📩 http://bit.ly/3zs7fJw##ポイピクonly はpixiv未掲載ポイピク掲載のみの作品▼R18=18歳以下閲覧禁止▼##全年齢 for all ages▼連載一覧http://hi.mi210.com/ser▼連載後はpixivにまとめ掲載http://pixiv.me/mi2maru▼注意http://hi.mi210.com/guide▼フォロ限についてhttps://poipiku.com/19457/8988325.html

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    凪茨▼ケーキバース凪茨、※モブに足を舐められる茨があります

    ##凪茨
    ##全年齢

    きみはごちそう4 生白くてあまい茨の肌に手を滑らせて、そっとそのなめらかさを堪能した。茨はわらっていて、私を呼んでくれている。舌を這わせて、その先端に齧り付いた。美味しいマシュマロ。
     鳩尾に、『私をお食べEat me』と書かれていて、そのまま破線が腹を切るように走っていた。
    『ここをたべてもいいよ』
     そっとその破線に触れると、ほろほろと糸が解けるように、茨の肉が開いていく。ぬろぬろした内臓の宝庫が開陳されて、むわりと甘い匂いが立ち上った。
     私は衝動を抑えきれずに――。
     茨を貪った。

     ***

     飛び起きれば深夜で、はっはっと息をする隣には茨が眠っていた。
    「……閣下?」
    「……ごめん、起こしちゃった……」
     茨は《ケーキ》で、《フォーク》の私が唯一感じる味覚だった。その美味しさは筆舌に尽くし難く、私に味を与えてくれる。
     食べてしまいたい、文字通り。
     でも、それ以上にずっとそばにいたかった。
     猟奇的殺人事件を起こす予備殺人者。
     それが《フォーク》。
    「……茨を食べる、夢を見た」
     夢は欲望だというのなら。
    「……茨から離れた方がいいのかな」
    「閣下、」
    「……私、茨を傷つけたくない」
     茨は起き上がって、くらやみのなかじっと私を見つめた。そうして、私の頰に触れて、そっと、触れるだけのキスをする。
     優しい甘さ。
    「俺、閣下になら、何されてもいいですよ」
    「……でも……」
    「だけれど閣下を殺人者にしたくはないので、難しいところですけれど」
     きらきらとくらやみにひかる海色が、ゆっくりとわらった。
    「俺は死にません、閣下のために。ずっとおそばにいて、ずっと食べてもらうために。まあ俺がなんらかの形で死んだのなら、ほんとうに食べていただいていいんですが――死体損壊の罪になってしまいますね――」
     ふふ、と茨は苦笑して、そっと私の手を取る。
    「それだけ、閣下のことを、お慕い申しております」
    「……茨」
    「俺、しぶといですからね。丈夫であります。閣下の衝動に耐えうるくらい、どうってことありません。生き抜いてみせます。二人で生きましょう。地獄の果てまで、一緒です」
    「……うん」
    「だから、捨てないでください、俺は弱くないですから」
     抱きしめあう。茨の甘い香りが濃くなって、その感情を知る。
     ほんとうに、私はこの子に出会えて、幸せだと知らしめられた。
     きっと、絶対に、離してはいけない。

     ***

    「……うん、これ、とっても美味しいよ」
    「試作品は成功でありますな!」
     Adamに《フォーク》と《ケーキ》というイメージがついてしまったことを逆手にとって、自社で商品開発をすることにした。
     フォークのための、味覚パウダー商品開発である。ワンダーシュガーは、かけるだけで甘みと旨みを感じられるようになる調味料で、一般の料理にも使える万能パウダーである。
     俺の成分を分析して再現し、それを閣下が試食する。完璧である。
     話題性を利用して、ワンダーシュガーは売れに売れた。乱凪砂監修も話題を呼んだが、なにせ『七種茨を食べる』というキャッチコピーで、そのファンを狂わせたのが成功だった。信者は増えた。甘くて美味しいものは、全人類を虜にする。
     ケーキの七種茨を、皆が欲した。
    (大成功でありますな)
     日課のランニングをしながら今後の計画を練っていて、油断していたのかもしれない。林の影に、同じランナーらしき男性が蹲っていた。
    「どうされましたか?」
     怪我でもしたのか、と近づいて介抱しようとした時――ビリ! と電流が走って俺は倒れた。
    (スタンガン……!)
     その男はわらっていた――捕食者の目を見て、俺は気を失った。

     ***

    「……ここは……」
     どこかの倉庫の調理台に、俺は四肢を磔にされて寝かせられていた。ガチャガチャと男がなにか道具を漁っている。俺に気がついて、汚くわらってみせた。
    「……いますぐ解放しなさい。そうすれば不問にします。さもなければ悲惨な人生になりますよ」
     男は何も聞かず、今、食べてあげるからねぇ、と、涎をこぼしてみせた。
    「……《フォーク》ですか……」
     俺がケーキということが喧伝されて、ワンダーシュガーを食べ、ほんとうに食べてみたいと思う狂人が実行に移すことについて。そこまで考えていなかった。代替品で欲望を満たせるのか、それに誘発され犯罪を犯すのか。卵が先か、鶏が先か。
    「放しなさい、いますぐ」
     男は話も聞かず、脱がされた俺の足先に、れろりと舌を這わせる。――気持ち悪い。
    「や、めろ!」
     足を思い切り蹴り上げて、男のくちを蹴り上げた。男はふらついて、逆上したこえをあげ、ぎらりとナイフを振り上げる。
     俺が死んだら、誰が閣下を守れるのか。
     ああでも、俺の味は形にして残せたからよかったなぁ――。
     目を閉じたその時、ダァン! と何かが倒れる音がした。
    「茨!」
    「……閣下?」
     SPたちが男のナイフを蹴り上げ、すぐさま取り押さえる。
     急襲はあっという間に完了した。
    「……大丈夫?」
     閣下は俺の戒めを解いてくれて、ぎゅっと抱きついてくる。
    「ど、どうやって……」
    「茨の匂いを探してここまできた」
     警察犬か?
    「……ずっと一緒にいるって、約束したから」
    「……ええ。俺を食べていいのは、閣下だけですからね」
    「……ふふ。……じゃあ、今夜」
     閣下に縋る手が、震えていることに気がつく。俺も弱くなったなぁ、と思いながら、その温もりに、溺れた。
     夜が酷く、待ち遠しかった。

     ***
    (220421)
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