利害の果て「最近、君から受ける依頼と対価が少しばかり見合わないと思うんだよね」
とあるバーのVIP専用の個室。
ふと思い立ったように男が言った。サングラス越しに頬杖をつきながら目の前の男を見据える瞳は何を考えているのかわからない。『対価』=『情報提供料』であることは明白ではある。その男の視線の先の男──刑事である男はもらった資料を黙々と見ていたがその言葉で視線を上げた。
「見合わない、と申されましても。依頼段階で提示した上で受けたのはあなたの方ではありませんか」
「まあ、それはそうなんだけど。君がお得意さんだからいいかなぁ……て。でもやっぱり、こっちが危ない橋を渡りそうでね。今回なんて、そちらが抱えている諜報員以上を求めてきたんだから当然見合わないと思うけど?」
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