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    秘密   无限と皇帝(死ネタ)

    秘密

    死期が近い。
    肺に酸素が取り込まれないのを、日々実感する。
    長く生きた方だ。周りの者は先に死んだ。
    彼と最後に会ったのはいつだっただろうか。
    もう十年にもなるか。
    あの時、彼は旅に出た時よりも落ち着いて、聡明になり、静かな水面のような風と、翡翠の奥に秘密を宿した眼をしていた。
    「あまり此処には来れません」
    そう彼が言った。
    私の皺だらけの手を両手で包み、言い聞かせるように。
    「お気づきの通り、私は老いを超越しました。年号大人が変わらないのはおかしいでしょう」
    「これがさよならか?」
    彼の声は私と違い、澄んでいる。
    「いえ、貴方が最後に望む時、私は来ます。此処で会いましょう」
    二人で訪れた庭園、夜にしか会えないと空から現れる男に、硬くなった頬を上げて笑った。
    「君は変わった」
    「逆でしょう?」
    「いや、私の記憶の君は、野心の炎を瞳に宿していたよ」
    「今は?」
    「嘘みたいに美しく澄んでいる」
    男は、无限は、私の浮き出た血管を指でなぞる。
    「もう、行きます。夜風は体に毒です」
    「まて、无限」
    「はい」
    とっ、と爪先で石畳を蹴り、ふわりと浮いた呼び止める。
    「君は今何をしている?」
    「貴方と同じことを」
    首を傾げると、无限は笑った。
    「調和を保つことです」
    頭を下げて、彼は飛び去った。

    側近に止められても、私は夜、庭に通った。杖をついて、若い頃はなんともなかった廊下をゆっくりとゆっくりと歩く。
    今夜が最後だろう。
    満月が石畳を照らしている。
    昼は雨が降っていた。
    露が木々を、緑を照らす。
    「无限」
    私は彼を呼んだ。

    ぶわ、と風が吹き、月を背に纏い彼は現れた。
    「此処に」
    あの頃と変わらない。
    「朝が来るまで、一緒にいてくれるか?」
    肺が鳴りながら、言葉が切れるのを无限は静かに聞いていた。もう私は朝日を見ることはないだろう。

    「望むままに」

    无限はそう言って、私の元に降り立った。
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    task_x00

    MOURNING帝はあんなに早く旅立つなんて聞いてないもん!!!!
    ってこの後思ったんですって
    年号

    「どういうことですか?」
    无限の冷たい声に帝は振り向いた。
    「名を使うなど、聞いておりません」
    「言ってないからな」
    帝が歩きだしたので、无限は追いかける。
    「お陰で私は笑い者です」
    无限の訴えを生返事で返す帝。
    无限の名は新しい年号となった。戦の時を終え、新しい時代。希望と平和の願いに満ちたその瞬間に報じられたのが、自分の名だったことに无限は驚いた。
    驚いたと同時に怒りも芽生えた。
    重要なことだ。帝の名とともに国の名、そして年号は歴史に刻まれる。
    ましてや、年号は帝と共に歩むもの。
    彼の生涯についてまわるもの。
    それが自分の名とは。
    无限は表に出たがらなかった。
    出世欲はなく、ただ、なすべき事をなす。
    闘争があれば先陣を切る。
    それを繰り返し、帝の側近、護衛に選ばれただけである。
    自分よりも強い者がいれば、今、この立場にはいないだろう。
    昔から不思議な力を持っていた。
    皆、持ち合わせているのだと思っていた力は、どうやら自分だけにしかないものだと気づいたのは物心ついてからだ。
    金属を思いのままにできる。
    気ままに金属を変形させると親が不安がるので、无限はやめた。村の中でも噂され 2779

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