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    帝はあんなに早く旅立つなんて聞いてないもん!!!!
    ってこの後思ったんですって

    年号

    「どういうことですか?」
    无限の冷たい声に帝は振り向いた。
    「名を使うなど、聞いておりません」
    「言ってないからな」
    帝が歩きだしたので、无限は追いかける。
    「お陰で私は笑い者です」
    无限の訴えを生返事で返す帝。
    无限の名は新しい年号となった。戦の時を終え、新しい時代。希望と平和の願いに満ちたその瞬間に報じられたのが、自分の名だったことに无限は驚いた。
    驚いたと同時に怒りも芽生えた。
    重要なことだ。帝の名とともに国の名、そして年号は歴史に刻まれる。
    ましてや、年号は帝と共に歩むもの。
    彼の生涯についてまわるもの。
    それが自分の名とは。
    无限は表に出たがらなかった。
    出世欲はなく、ただ、なすべき事をなす。
    闘争があれば先陣を切る。
    それを繰り返し、帝の側近、護衛に選ばれただけである。
    自分よりも強い者がいれば、今、この立場にはいないだろう。
    昔から不思議な力を持っていた。
    皆、持ち合わせているのだと思っていた力は、どうやら自分だけにしかないものだと気づいたのは物心ついてからだ。
    金属を思いのままにできる。
    気ままに金属を変形させると親が不安がるので、无限はやめた。村の中でも噂され始め、无限の家族は肩身が狭くなってしまったからだ。
    金属は武器に使われることが多かった。
    日常で使うことができるのは、薪割り程度のものであろう。
    同世代の子供が、斧で懸命に割っているのをみた无限は、自分だけが手にマメを作らないことが嫌だった。だから、自分も斧を握った。

    初めて強い力を使ったのは、村が軍人に襲われた時だった。夜中、村人が松明を焚き、強奪を目論む軍人に立ち向かっている時。无限は危険を察知して起きた。大人に止められるのは承知。身を潜めてやりとりを見ていた。軍人が刀を抜き、村人に斬りかかった時、无限は力を使った。
    刀はひしゃげ、四方に飛び散った。
    无限はこの時に気づいた。自分の力は戦闘にこそ役立つものだと。
    軍人に怯える村人を見て、无限は思った。
    今日が防げたとしても、また危機はやってくる。自分がいたから今日は防げた。でも明日は?明後日は?半年後、一年後。戦争は長くて十年を超えることもある。无限は背筋が凍った。ずっと偶然にすがって生きていかなければならないのか。
    天から賜れし力と、平和を得ることが結びついた時、无限は軍人になる事を決めた。
    闘争の道を選んだのだ。
    无限は、争いのない世を望んだ。
    だから、无限は戦乱の中心へと飛び込んだ。
    その夢に一番近しいところにいる側に着いた。
    ただ、それだけである。
    帝は、无限の夢に近い存在だった。
    思想、性格、頭脳、人望。勘が鋭い男だった。
    无限の力も怯える事なく、さらりと受け入れた。
    无限は冷静に物事を選んできただけである。
    そんな自分が年号の名になるなど、不本意だった。
    无限の夢に、无限の名が付いたのだ。

    「笑い者ならいいじゃないか。皆を笑顔にできるだろう」
    「…私は困ります」
    人を笑顔にすることは苦手であると无限は続けようとしたが、遮られた。
    「お前の夢だろう」
    語ったことのないそれを言われて无限は息を呑んだ。
    「来なさい」
    さらに歩き出す帝を静止するよう、无限は声をかけた。
    「ならば護衛をつれてきます」
    「いや、お前と話がしたい。それに、お前と刀があれば怖いものはないだろう。虎さえも逃げ出す」
    笑って帝が歩くのを、无限はついて行くしかできなかった。

    新しく作った庭園に案内された。
    世俗と分断されたような感覚。森の中にいるようだった。丸くくり抜かれた塀が、庭だと思い出させてくれる。
    木々の香りを嗅ぐのが久しぶりで、无限は深呼吸をした。心まで染み入るようだった。
    「いいだろう」
    帝が言う。
    「ここにくると、人間だと実感できる」
    「ええ、そうですね」
    无限は先程の怒りが落ち着いたのがわかった。
    「お前に話さなかったのは悪かった。一番嫌うだろうことだな。話そう」
    「はい」
    无限は帝の背を見ていた。

    「お前は尽力してくれた。この国ができたのは、无限、お前の功績でもある」
    「私は」
    「遮るな、聞け」
    「わかりました」
    石畳を踏む音が響いた。
    「お前の功績が歴史に刻まれないことが、悔しかったのだ。共に戦った仲間だ。私だけが残るのはおかしいと思った」
    「立場が違います」
    「そうだ。だから名が残らん。…お前とは同志であると思っている。他の側近は歴史に名を残そうと躍起になっているが、お前は興味もない。だから年号に選んだ」
    「飛躍しすぎです」
    「違いない」
    帝は笑った。
    「お前は側近に相応しい。が、その役にお前は縛られない」
    无限は沈黙した。
    「……お前は、いつか私の元を去るだろう。名を残さず」
    帝が寂しげに笑う。
    「友の旅立ちを止めはしない。だが、共に作り上げたこの国を忘れないでほしい。そして、この国と共に名だけでもいてほしいのだ」
    心を見透かされているようだった。
    无限の夢は実現した。
    国が統一され、民の歓声を聞いた時、自分のすべき事が終わったと无限は感じた。
    无限は、自分はここで老いていくのだろうか?と考えた時、違和感を覚えた。
    自分の才を認めてくれる者がいる、確固たる地位もある。暮らしにも困らないだろう。
    でも、何かに違和感を得ていた。
    ここに居てはならない気がしていたのだ。
    それを帝が感じていたならば、やはり勘の鋭い男だ。
    「嫌でも自分の名がある国は忘れないだろう?」
    帝がしたり顔で无限に笑うのを見て、无限は降参だと鼻から息をついた。
    「わかりました。帝のご意志、受け止めました。それに今更、翻す事もできません…感謝いたします」
    「うん、それでいい。名だけ貸してくれ」
    その身を称する名は、その者にとって大切なものだと帝は言った。
    事の重みに无限の怒りは消えうせ、目の前の男の懐の広さに尊敬をした。
    縛りはしない。
    その言葉に无限は新たな希望を見出した。

    「年号大人」
    「笑えない」
    自分を助けた妖精に面会した。
    不思議な雰囲気だった。
    无限は幼少から自分の中に溢れてくる感覚と、目の前にいる男の雰囲気が同じものだと感じた。理解した。
    この男に出会うべきして、出会ったのだと。
    酒を飲み交わすうちに、无限の中で新たなる望みが生まれてくるのを感じた。
    帝の言葉。想い。
    老君の声がゆっくりと聞こえる。

    「なるほど」
    そう呟いていた。
    すべては彼の手の中か。
    「違いますよ」
    老君は椀を見つめたまま无限に言う。
    「心を読んだのですか?」
    「いえ」
    老君は无限を見た。
    「顔を見ればわかります」
    「…私はわかりにくいと言われますが」
    「長く生きていると、色々見えるんですよ」
    老君は微笑んだ。
    「なるほど」

    无限は僅かに口角を上げ、酒を煽った。
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    task_x00

    MOURNING帝はあんなに早く旅立つなんて聞いてないもん!!!!
    ってこの後思ったんですって
    年号

    「どういうことですか?」
    无限の冷たい声に帝は振り向いた。
    「名を使うなど、聞いておりません」
    「言ってないからな」
    帝が歩きだしたので、无限は追いかける。
    「お陰で私は笑い者です」
    无限の訴えを生返事で返す帝。
    无限の名は新しい年号となった。戦の時を終え、新しい時代。希望と平和の願いに満ちたその瞬間に報じられたのが、自分の名だったことに无限は驚いた。
    驚いたと同時に怒りも芽生えた。
    重要なことだ。帝の名とともに国の名、そして年号は歴史に刻まれる。
    ましてや、年号は帝と共に歩むもの。
    彼の生涯についてまわるもの。
    それが自分の名とは。
    无限は表に出たがらなかった。
    出世欲はなく、ただ、なすべき事をなす。
    闘争があれば先陣を切る。
    それを繰り返し、帝の側近、護衛に選ばれただけである。
    自分よりも強い者がいれば、今、この立場にはいないだろう。
    昔から不思議な力を持っていた。
    皆、持ち合わせているのだと思っていた力は、どうやら自分だけにしかないものだと気づいたのは物心ついてからだ。
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