無題「DJ、オイラとデートしない?」
青天の霹靂とはよく言ったものだ。ビリーからの突然のお誘いなんてものはフェイスにとってよく慣れたことであった。
だが、こうしてデートという単語で誘われたことは今日が初めてであった。そういうつもりはないのだろうが、こちらは勝手にそういうつもりになってしまう。
雨の音に共鳴する鼓動を誤魔化すように、いつも通りの顔で仕方ないなと返事をする。
今日はバケツをひっくり返したような土砂降りの日だった。
そのせいか、談話室には誰もいない。二人きりである。
いつものようにビリーの隣に腰掛ける。
ビリーは何か言いたそうに口を開いたり閉じたりしていたが、結局何も言わずに口を閉じてしまった。
この沈黙はフェイスにとって居心地の悪いものではなかった。
1984