お互い無意識に主導権決まってるミタロイ テーブルの上には、軍務省から回ってきた演習計画の草案が幾つも重ねられていた。静けさの中、薄い紙の擦れる音と、時折グラスに注いだ水が喉を通る音だけが響く。
俺――ウォルフガング・ミッターマイヤーは、かつてから幾度も繰り返してきたように、隣に座る友を相手に作戦案を検討していた。
「この規模の演習なら、補給のシミュレーションをもっと細かくしておいた方がいいな。兵站の遅滞は、そのまま部隊運用の遅れになる」
「……ふむ。確かに卿の言う通りだ。ここでは兵站線を二重に引いておくのが良いだろう。片方が潰れても即応できる」
ロイエンタールは、落ち着いた声で答える。視線は終始、手元の書類に注がれていた。きっちりと整えられた制服の襟元、整然とした立ち居振る舞い、その全てが彼の端麗な容貌をさらに際立たせていた。
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