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    kimikoSunohara

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    【千ゲン】z=1.9.7 その後の劣情、七年越しの愛欲について

    ※注意 がっつり本誌のネタバレというか本誌(z=1.9.7)のその後のお話です!!

     七年ぶりのマジックショーを終えて、宴もたけなわになり夜もふけると、みんな酔いつぶれて寝てしまった。
     全員が寝泊まりできる民家なんてあるはずもなく、みんなで焚き火を囲んでの雑魚寝だ。
     サマーキャンプみたいで悪くはないけど、贅沢を言えばふかふかのベッドと柔らかい布団が恋しい。
     俺はその夜、なんだか寝付きが悪かった。
     七年ぶりに目覚めた興奮が覚めきらないのか、起きたり眠ったり浅い眠りを幾度も繰り返していたところ、誰かに足をつんつんとつつかれる。
     そっと目を開けると、千空ちゃんが俺の顔を覗き込んでいた。

    「せんく……ちゃん? ……どうしたの?」
    「ゲン、ちょっとこい」

     千空ちゃんに腕を掴まれて、俺は眠たげに目を擦りながら起きあがる。

    「司ちゃんとの話はもういいの?」
    「ぁ、終わった。次はテメーに話がある。ちょっと来い」

     千空ちゃんに改まってそう言われて、強引に手を引かれる。
     こんな夜中に話ってなんだろ。
     俺はなんだか少し不安になって千空ちゃんに手を繋がれたままあとをついていく。
     夜の森は暗かったけれど月光がどこまでもついてきて足元を照らしていた。
     ジャングルを抜けて、千空ちゃんは俺を小高い丘のうえに連れていく。

    「うわ~……、星が綺麗」
    「だろ?」

     その小高い丘は見晴らしがよくて夜空を見上げると無数の星が煌めいていた。
     まるで銀河鉄道の夜みたい。

    「あっ、流れ星!!」

     俺は思わず歓声をあげた。
     肉眼でもはっきり見えるくらいの流れ星が次から次へと空を滑車のようにして滑り落ちていく。

    「ちょうど流星群の夜だったみてーでな」

     千空ちゃんは、まるで流星群を自分でクラフトしたみたいに得意げだった。

    「テメーにも見せたかっんだ」

     千空ちゃんはそうはにかんで、そっと手を伸ばし俺の白い髪に触れた。
     俺はぎゅっと胸が締めつけられる。

     あぁ、やっぱり千空ちゃんが好きだなぁ……。

     七年経っても、この気持ちは1ミリも色褪せることなんてなかった。

    「それで千空ちゃん、大事な話ってなに? 流星群のことだけじゃないでしょ?」

     俺は覚悟を決めて本題を切り出す。

    「~、そのなんだ……」

     千空ちゃんは少し困ったようにガシガシと頭を搔いた。

    「そんなに言い難いことなの?」
    「そういう訳じゃねーが……」
    「わかった。別れ話でしょ」
    「?!」

     千空ちゃんは驚いて目を見開いた。

    「俺なんかよりもよっぽど守りたい好きな人ができたから別れたいんだよね?そういう話でしょ??」
    「なんでそうなった??」
    「だって……」

     俺は言い淀んで、視線を泳がせる。

    「言え」
    「言いたくない」
    「言わねーと許さねぇ」

     千空ちゃんが気色ばんで俺の手首を強く掴み、強引に木の幹に俺を押し付ける。
     俺は耐えきれなくなって、悲鳴をあげるみたいに叫んだ。

    「だって、俺なんかよりずっとスイカちゃんのほうがいいかなって!!スイカちゃん、ゴイスー美人になっちゃってさ……、世界で男と女、二人きり……、それこそアダムとイヴみたいになってさ、間違いが起こっても仕方ないかなって思うじゃん!! そこに俺なんかが入り込む余地なんてある?!」

     気付いた時には、俺は千空ちゃんの腕の中にいた。
     懐かしい千空ちゃんの匂いがする。

    「離してよ……、俺なんか千空ちゃんと釣り合わないよ……」

     ぽろぽろと大粒の涙が俺の頬を伝って落ちていく。

    「バカか、テメーは」

     千空ちゃんは呆れ顔で告げた。

    「スイカといきなりどうにかなるわけねーだろうが」
    「……、本当に?」

     俺はじっと恨めしげに千空ちゃんを見つめた。
     涙で千空ちゃんの顔が歪む。
     こんなこと考えてる自分が浅ましいって嫌になるけど……、でも石化が解除されて、大人びたスイカちゃんを目にして全てを理解した時、俺の中に込み上げてきたのは、スイカちゃんに対するどうしようもない嫉妬だった。
     考えないようにすればするほど、千空ちゃんとスイカちゃんが二人きりで過ごした蜜月が気になってしかたなくて、ぐるぐるして胸が苦しかった。
     俺が最初の復活者になればよかったんだ、なんてスイカちゃんの苦悩も哀しみも孤独も何一つ知らないくせに醜い嫉妬ばかりが頭を過ぎって、自分が嫌になる。

    「いいか、その耳かっぽじってよく聞けよ、メンタリスト」

     千空ちゃんは俺の顎を掴んで強引に上向かせた。
     千空ちゃんの射るような視線から逃げたくても逃げられなくて、俺は千空ちゃんと見つめ合う。

    「俺がこの七年間、ずっと考えてたことはだな」

     千空ちゃんの紅蓮の瞳に俺だけが映っている。

    「あさぎりゲン。テメーのことだ」
    「……、俺のこと……?」
    「目覚めてからの半月もずっとテメーのことばっか考えてた」
    「うそぉ……」
    「嘘じゃねー。毎日、愛しい恋人のこと考えてなにが悪ぃんだ?」
    「それを千空ちゃんの嫌いな恋愛脳って言うんじゃないの」
    「だとしたら、俺をお花畑にしたのはテメーだ」

     千空ちゃんはそう言って、赤く腫れた俺の目元に口付けた。
     俺はぎゅっと千空ちゃんの服の袖を掴む。

    「……少しくらい大人になったスイカちゃんにぐらついたり、唆られたりしなかった?」
    「1ミリも。テメーがいんのに余所見してる暇なんてねーだろうが。ちったぁ自信持て、メンタリスト」
    「うう、それができたら苦労しないんだけど……」

     千空ちゃんが好きすぎて、些細なことで不安になったりぐらついたりする。
     だって、誰かをこんなに好きになったことなんてなくて。なみなみと注がれた水がコップから溢れるみたいに、自分の感情をどうしても持て余してしまうんだ。

    「つーかな、この七年、テメーを抱き潰したくて仕方がなかった」

     千空ちゃんはそう囁いて喉の奥でクククと笑い、俺に噛みつくようなキスをした。

    「……っ、ぁ……、せんくちゃ……」

     水音を響かせながら延々と濃密に舌を絡ませあって、俺の腰が抜けそうになった頃、千空ちゃんは俺のネクタイをするりと外した。

    「抱かせろ」
    「や……、だってここ、外……っ、誰か来たら……っ」

     千空ちゃんの腕が俺のくだけた腰を抱き止める。

    「誰も来ねーし、みんな寝てる」
    「……っ、だから、俺を呼びだしたの?」
    「他にどんな大事な理由があるっつーんだ、テメーはよ」

     千空ちゃんはむぅっと顔をしかめて、叢に俺を押し倒した。
     視界がひっくり返って、千空ちゃんと満天の星空が飛び込んでくる。

    「七年越しの俺の愛欲をうけとめやがれ。もう二度と変な誤解できねーように、テメーがどんだけ愛されてるかその体に叩き込んでやる」
    「……っ、せんく…、ちゃん……っ」

     千空ちゃんは何度も何度もキスの雨を降らせながら俺の身体を愛撫した。
     まるで夜空を流れるペルセウス座流星群のように。
     夜の闇に紛れて、二人の境界線が溶けてなくなるまでずっと。
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    kimikoSunohara

    SPOILER【千ゲン】z=1.9.7 その後の劣情、七年越しの愛欲について

    ※注意 がっつり本誌のネタバレというか本誌(z=1.9.7)のその後のお話です!!
     七年ぶりのマジックショーを終えて、宴もたけなわになり夜もふけると、みんな酔いつぶれて寝てしまった。
     全員が寝泊まりできる民家なんてあるはずもなく、みんなで焚き火を囲んでの雑魚寝だ。
     サマーキャンプみたいで悪くはないけど、贅沢を言えばふかふかのベッドと柔らかい布団が恋しい。
     俺はその夜、なんだか寝付きが悪かった。
     七年ぶりに目覚めた興奮が覚めきらないのか、起きたり眠ったり浅い眠りを幾度も繰り返していたところ、誰かに足をつんつんとつつかれる。
     そっと目を開けると、千空ちゃんが俺の顔を覗き込んでいた。

    「せんく……ちゃん? ……どうしたの?」
    「ゲン、ちょっとこい」

     千空ちゃんに腕を掴まれて、俺は眠たげに目を擦りながら起きあがる。

    「司ちゃんとの話はもういいの?」
    「ぁ、終わった。次はテメーに話がある。ちょっと来い」

     千空ちゃんに改まってそう言われて、強引に手を引かれる。
     こんな夜中に話ってなんだろ。
     俺はなんだか少し不安になって千空ちゃんに手を繋がれたままあとをついていく。
     夜の森は暗かったけれど月光がどこまでもついてきて足元を照らしていた。
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