On a Date 月の出ていない夜、シーザーに宛てがわれた部屋は影すら生まれる余地がないほどに暗闇が充満している。部屋の主は昼間に干された太陽の名残がある布団に挟まり、白いシーツの上に黄金色の髪を散らして眠っていた。
ジョセフと共にエア・サプレーナ島に来てからおよそ一週間。今までより一層過酷になった波紋の鍛錬にも何とか慣れてきたところだが、それでも身体に溜まる疲労は尋常でなく、日付が変わるよりもずっと早くに眠りに付く日々が続いている。ある意味健康的な生活を送ることができていた。早寝早起きは人間生活の基本なのだ。
しかしこの日の夜はいつもと少し違うことが起きる。耳をすまさなければシーザーの寝息すら聞こえない程に静寂に凪いだ部屋の中に、誰かが扉を叩く音が響いた。
4238