降風で昨日のキスを踏まえた話。渋谷の処理も済み、ようやく息をつけるようになったのは11月も半ばを過ぎた頃だった。
ここ数ヶ月の中では比較的被害総額が少なかったのが幸いし、大量の書類はあれど謝罪行脚はほどほどですんだ。
いつもと全く変わらない降谷とふたり、彼の愛車の助手席に座る風見は、気付かれないように降谷の唇に視線を向けていた。見ないようにしようとしつつも、どうしても見てしまう。
彼が何かを話すたびに、形のいい薄ピンクが上下に動きその奥にちらりと赤が見える。
「〜〜の警備体制だが、風見には、…聞いているのか、風見?」
「ぇ、っっ! す、すみません、あのっ、もう一度、」
怪訝そうな降谷の声にハッと顔をあげる。嫌な速度で心臓が早鐘を打っていた。冷や汗が滲む。
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