メフィスト誘われた当初、月の光を溜め込んだような銀髪の男は、ピスコの言葉を一笑に付してみせた。おまえの表の顔に丁度いい相手がいるだろうと。枡山憲三として得た女性のことだろうとすぐにわかった。彼女よりもおまえと行きたい。彼女には、友人との小旅行をプレゼントしてある。ジンのことは、会社の人間に重要な取引先になるかもしれない企業の取締役で。お互いのことを知るために、プライベートで会うことになったと伝えてある。
ジンは、半ば無自覚に必死にジンを誘うピスコを軽く嘲笑ってみせた。そして、さらに面白いものを見ようとでもいうのか。そこまで必死になったということは、余程面白いものを用意しているんだろうな?と尋ねてきた。
食いついてきたジンに高揚感を感じながら、演目とともに観劇に行くということを用意しておいた伝える。するとジンは、先程の態度とは打って変わってピスコの誘いを受けると応えた。その時のジンは、何故かピスコの持つチケットと彼の顔を交互に見ながら異様なほど楽しそうにしていた。まるで、プレゼントを目の前にした子どものように。
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