おまじない「いたいのいたいの、とんでいけー」
石に躓いて出来た膝の傷に絆創膏を貼り、その上からウィルに優しく撫でられる。
「なんだよそれ」
「日本のおまじないなんだって。この前よんだんだ」
「ふーん」
ウィルは救急箱を片付けながら教えてくれる。
日本が好きだと言うウィルに、家にある本を貸すことは多い。きっと貸した中にでも書いてあったのだろう。
片付けが終わり、近づいてきたウィルに頭を撫でられる。
「やめろよ!子どもじゃないんだぞ!」
「子どもだろ。おれもアキラも」
「じゃあアニキ面すんな」
ウィルの腕をぶっきらぼうに叩き退ける。それでもウィルはにこにこ笑っていて、敵わないのだと少し悔しくなった。
「いたいのいたいの、とんでいけー」
「何?それ」
「昔ウィルが教えてくれたおまじない」
サブスタンスとの戦闘でできた頬の傷に、絆創膏を貼る。「少し貼りにくいから」と、ウィルがお願いをしてきたのだ。
「もう子どもじゃないだろ」
「まだ成人してないから、子どもと同じじゃないか?」
「大人でもねぇなら、少し背伸びしても問題ないよな」
「え?」
戸惑うウィルを他所に、ちゅっと絆創膏の上にバードキスを落とす。
状況が飲み込めない、と呆気にとられるウィルをそのままにいたずらっぽく笑う。
「kiss it better!」
林檎のように赤く染まる頬は見ていて気分が良かった。