子育て編
悟視点
「ママ!ママ……」
5歳になった薫の声に、悟は目を覚ました。
「うん?どうしたの」
「パパ……おしごと行っちゃの?」
「うん。昨日のお仕事でトラブルがあったみたいなんだ。でも夕方までには帰ってくるよ」
唇を噛んだ薫は、眉を八の字にして「約束したのに」と大きな瞳に涙を溜めている。
手には昨日の夜、傑にあてて書いた手紙が握られていた。
「そうだね。薫と約束してた、のパパも覚えてたし、楽しみにしてたよ」
「でも、おしごといっちゃった……」
今日、2月3日に渡すんだと、まだ不慣れなひらがなで傑に手紙を書いていたのだ。
何度も、何度も書き直して色鉛筆で傑の似顔絵も描いた傑作を、傑が起きたら渡したかったのだろう。
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