かわいい 自分の名を呼ぶ声で、ヒカリは顔を上げた。
海風の影響だろうか、クチバシティの朝は涼やかであった。周囲には、彼女と同じように人待ち顔の男女が数人、簡易ベンチにもたれながらそれぞれのスマホを覗き込んでいる。
ヒカリが声のした方向に視線を巡らせると、あずき色の髪の三つ編みを揺らしながら、待ち合わせの相手が小走りにやって来た。
「ごめーんヒカリ、遅くなった」
「コハル。大丈夫大丈夫、あたしもさっき着いたとこ」
二人の足許では、それぞれのパートナーであるポッチャマとイーブイが再会を喜んでじゃれあった。
「ありがとヒカリ。今日は遠くから……」
「だってコハルのリサーチフェローデビューを飾る第一歩でしょ。行かないわけにはいかないでしょ」
11002