トㇰトㇰセそれは、俺がアシㇼパさんとアイヌコタンに帰ってきて暫く経った、ある夜の出来事だった。
「…もう、寝たのか…杉元」
その日、夕食を終えたアシㇼパさんはいつにも増して上機嫌だった。追い掛けていたユクも守備良く仕留め、美味いオハウに二人で舌鼓をうった。少し頬を赤らめながら敷いた松葉の上で満足気に微笑む顔といったら、他に例えようのない可愛さがあった。片付けもそこそこにして、明日の予定を立てつつの就寝前の会話はお開きとなったはずだったのだが…。
「…いや、まだ起きてるけど…」
「そうか…」
もう、とうに眠ったと思っていた焚き火を挟んだ対岸側から声を掛けられて、俺は瞑っていた目をうっすらと開いた。見ると、こちら側に背を向けて横になっているアシㇼパさんがモゾモゾと動いているではないか。
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