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    くろかわ

    @kuro_kawa945

    腐ってる
    創作とかサガフロ双子とかその時好きなものあれこれ描きたい
    絵も文章もどっちもここに上げます
    ワンクッションしてる絵は大体女装なのでご注意下さいませ

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    くろかわ

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    文字書きリハビリ
    RS時空で来てからそんなに時間は経ってない
    ロアーヌ郊外に塔士とかその辺の宿舎あるんじゃないの?って感じ
    まだちょっとブルーとルージュの仲が悪い
    誤字脱字とか文章抜けてるとこ見つけ次第修正する

    ##文章

    朝日 カーテンが開かれる音と共に、遮られていた朝日が室内に差し込む。
    「朝だぞ、起きろ」
     瞼はもう少し閉じていたいと訴えてくるが、目を少しだけ開いて声のした方に視線を向けた。
     どうやら今日は向こうが先に起きていたらしい。
     太陽の光を受けてキラキラと輝く銀色の髪。
     その下で紅色の瞳がこちらを見ていた。
     顔立ちは自分と同じはずなのに、髪や目の色が違うだけで全く違う印象を受ける。
     数日間暑い日が続いていたからか、普段のブルーと同じように頭の高い位置で纏められていた。
     きっちり長さを整えているブルーの髪とは違い、適当な長さで切られたルージュの髪は、あちこち好きな方向へ跳ねている。
     似ていない、違う部分を見つける度に、本当に自分の半分なのだろうかと思ってしまう。
     視線に気付いたのか銀髪が揺れて、ベッドの脇まで歩み寄ったルージュがこちらを覗き込んできた。
    「なんだ……まだ眠いのか?」
    「……いや、起きる」
     口端を吊り上げて笑う男に軽く返事をし、ベッドから足を下ろす。
     向こうもまだ起きてからそう時間が経っていないようで、服はまだ寝間着のままだ。
    「おはよう」
    「あぁ、おはよう」
     毎朝の挨拶も慣れたものだ。
     同じ顔で服が似ているから兄弟だろうと、宿舎では同じ部屋に押し込まれ。
     断りたかったが、宿舎の部屋にも限りがあるからと頼み込まれ、仕方なく了承した。
     最初こそ一言も口を利かなかったのだが。
     さすがにそれでは不便過ぎたので、必要最低限の会話は交わすようになった。
     半年が過ぎた今では、友人のようにとはいかないが、いくらかまともな会話をしている。
    「朝食は?」
    「コーヒーだけでいい」
    「パンがあるからそれだけでも食べておけ」
    「……分かった」
     今日は特に予定もないので、図書館にでも行って過ごそうかと考えながら、ひとまず髪を纏める。
     二つ並んだベッドから少し離れた場所にある簡易キッチンでは、ルージュが湯を沸かしている。
     テーブルの上へ置かれた籠にはいくつかのパンが入っていた。
     少し離れた食堂まで行けばしっかりした朝食を摂ることが出来るのだが。
     自分もルージュも朝はあまり食べない方だったので、パンをいくらか買い置きするようになった。
     その内一つを手に取って何もつけず口に放り込む。
     半分ほど食べ終わる頃、コーヒーの注がれたカップが置かれる。
     元の世界と食べる物がそう変わらないのは良かったと思う。
    「ん」
    「あぁ、悪いな」
    「……自分の分を淹れるついでだ」
     向かいの椅子に腰を下ろしたルージュが、籠のパンへ手を伸ばす。
     それは次に食べようと思っていた物だったが、それを言えば喧嘩になるのは分かっているので、大人しく違う物を取る。
    「今日は?」
    「特に予定は無かったはずだ……、お前の方は?」
    「こちらも特に予定は無いな」
    「そうか」
     この通り、会話が続かない。
     必要最低限、情報のやり取りをする程度だ。
     とても会話とは言えるようなものではない。
     喧嘩をしている時が一番言葉を交わしているだろう。


     食事を済ませた後は、各自身支度を整えて動き始める。
     魔物の討伐や聖塔・魔塔の攻略がない日、異界の戦士達は比較的自由に過ごしている。
     鍛錬をする者、友人と話し込む者、酒場で呑んだくれる者。
     過ごし方は人それぞれだが、ブルーやルージュなどの術士は、ロアーヌの街中にある図書館で時間を過ごす事が多かった。
     学院にいた頃は術に関する事しか学んでこなかったが、様々な種類の知識を得るのはとても楽しい。
     どんな技術を使っているのかは分からないが、図書館内は屋外よりいくらか涼しく、とても静かだ。
     その上話し掛けてくる人間もほぼいないので、心穏やかに過ごすことが出来る。
     空いている席を探すため、館内をぐるりと見回すと、窓際の席にルージュの姿を見つけた。
     集中しているのか、こちらには気付いていないようだ。
     少し離れた席を選び、棚から選んできた本を広げながら、横目で様子を窺う。
     ページを捲っては時折考え込むような仕草を見せ、納得したのか小さく頷いては次のページへ移行する。

     しばらくすると、見覚えのある姿がルージュの近くに立っていた。
     椅子を引いて隣の席に座ったのは、小柄な少女だった。
     ルージュと同じ陰術を使うらしく、時折組んで討伐に出ているのを見た事がある。
     周囲の迷惑にならないよう耳元に口を寄せて、何度か会話を交わした後、お互い自分の本に目を落とす。
     本に目を落としては、数分も経たない内に横目で二人の様子を窺う。
     基本的に自分の本を読んでいるが、時折先程のように言葉を交わしては小さく笑い合っていた。
     手元の本は、ページこそ進んでいるものの、内容はほぼ全くと言っていいほど頭に入っていない。
     一時間もすると、少女は目的を済ませたのか席を立った。
     また小声で話してから小さく手を振り合い、少女はその場を離れる。
     それを見送ったルージュの表情に、視線が吸い寄せられた。
     目を細めて眉尻を軽く下げ、口元は柔らかく弧を描いている。
     同じ部屋で生活するようになってからおよそ半年。
     その間、一度たりとも見た事のない表情だ。
     自分と会話している時は、大抵仏頂面か挑発するような笑みを浮かべていることが多い。
     それもあってか、まるで知らない人間を見ているようだった。

     席を立って本を棚に戻した所までは記憶がある。
     どうやって帰り着いたのかは、よく覚えていない。
     気付けば割り当てられた宿舎の部屋、壁に掛けられた鏡の前に立ち尽くしていた。
     鏡に向かい、昼間の図書館でルージュがしていたように笑顔を作ってみる。
     だがそれはどうやっても見慣れた自分の顔で、ルージュのそれとは似ても似つかない。
     自分達は本当に同じ顔をしているのか不安になるほどだ。
     映る角度を変えてみた所で何か変わるはずもなく。
     いい加減飽きて夕食を済ませるため出掛けるかと思い立った所。
    「笑顔の練習か? いい心がけだな」
     いつの間にか図書館から帰ってきていたルージュが、鼻で笑いながら通り過ぎていく。
     その顔は、つい先程鏡に映っていたものとよく似ていた。

     食堂や共同浴場は居室から少し離れた場所にあるので、その間はルージュの顔を見ずに済んだのだが。
     夕食を食べている間も、風呂に入っている間も、昼間見た表情が頭の中から離れなかった。
     よほど呆けていたらしく、帰り道では何度か転びかけ。
     ふらつく足で部屋へ帰り着く頃には、既にルージュの体はベッドの上。
     かろうじて明かりは灯っていたが、起こしてしまっては面倒だ。
     あまり音を立てないよう明かりを消し、自分用のベッドへ体を横たえる。
     どうにか寝ようと目を閉じてみても、上手く眠気は訪れてくれない。
     起きて本を読もうにも、この狭い居室で明かりを点ければ、ルージュを起こしてしまうだろう。
     つまり今の自分に出来るのは眠る努力をすることぐらいだ。
     

     今日はどうやら自分の方が先に目を覚ましたらしく、隣のベッドからはまだ寝息が聞こえてくる。
     近付いて、ベッドの脇に膝を付いても目を覚ます様子はない。
     寝る時も纏められていない髪が、シーツの上へ散らばっている。
     鬱陶しくないのだろうかと思いながら、その一房を指に絡めた。
     想像していたより少し硬い髪が、するりと指を滑っていく。
    「んー……」
     口元から小さな音がこぼれ、天井を向いていた顔が寝返りでこちらを向く。
     少し驚いて手を引けば、指に絡めていた髪はするりと逃げていった。
     こんなに近くで顔を見るのは、初めてかもしれない。
     目元に影を落とす、髪より少し濃い色の睫毛。
     僅かに揺れた睫毛の奥に、名前と同じ紅い瞳が見えた。
     ぱちぱちと幾度か瞬きを繰り返した後、ぼんやりとしたままの目がこちらを向く。
    「……なに……?」
     少し不明瞭な、どこか幼くも聞こえるような声が唇からこぼれ落ちる。
     そこにあったのはいつも見ている表情ではなく、先日図書館で見た柔らかい笑顔だった。
     触れたい、という思いが突如湧き上がり、思わずその頬へ手を伸ばしてしまう。
     まだ完全に目覚めていないのか、温かい頬が掌に擦り寄せられる。
    「……もうちょっと……ねむ……」
     その言い方がまるで甘える子供のようで、思わず口元が緩む。
     もう一度触れたくて手を伸ばすと、閉じていた目がぱちりと開いた。
     こちらの存在が瞳に映ると、驚いたように肩を震わせ。
     そこでようやく目が覚めたのか、勢いよく上半身が跳ね上がる。
     何度か目線が自分の手元とこちらを往復した後、現状を把握したのか、白い肌を耳まで一気に赤く染めた。
    「……っ、おまえ……」
     わなわなと唇を震わせながら何か言おうとしては口を噤んでを繰り返す。
     俯いて表情が見えなくなったと思いきや、深く深く息が吐き出された。
     そして顔を上げた時には、もう顔の赤みは僅かに残るのみ。
    「……何か用か?」
     先程までの表情はなりを潜め、不機嫌そうに眉を顰めた、見慣れた顔がそこにあった。
     一瞬でも可愛いなどと思ってしまった自分を、脳内で叱咤する。
    「いや、別に……」
    「はぁ……」
     じとりと恨めしそうにこちらを一瞥してから、不機嫌そうな顔を崩さないままでルージュはベッドを降り、簡易キッチンへと向かう。
     今日は自分がコーヒーを用意するつもりだったが、下手に手を出して刺激するのも面倒だ。
     髪を纏めてから食卓へ移動し、ルージュの後姿を眺めながら、ぼんやりと思考を巡らせる。
     先に起きた方がもう片方を起こすようになったのは、朝食を共にし始めたのはいつからだったか。
     最初は会話どころか視線すら合わせなかったはずだ。
     まともに話したのは確かこの部屋で暮らすようになってから一ヶ月程が過ぎてから。
     それから大小の差はあれど喧嘩もするようになった。
     けして仲の良い兄弟という訳ではない、どちらかと言えば仲は悪いだろう。
     なにせ、元々は一人の人間で、片割れを殺して一人の完全な術士にならなくてはいけないのだから。
     それが今では同じ部屋で日々を過ごし、肩を並べて戦う事もある。
     学院を卒業した時は考えもしなかった生活。
     一体これがいつまで続くのかは分からないし、予想もつかないが。
    「何だそのだらしない顔は」
     思考を断ち切るような音を立てて、カップがテーブルに置かれる。
     その勢いでコーヒーの雫がテーブルへ跳ねた。
     見上げた顔の眉間に刻まれた皺は、先程よりも深さを増し。
     吊り上がった目からは殺意のようなものが滲んで見える。
    「いいか、さっきの事は忘れてくれ」
    「気が向いたらな」
    「……ぐっ」
     照れ隠しか八つ当たりなのかは分からないが、口元に勢いよくパンを押し付けられる。
     しばらくは早起きしてみるの悪くないかと思いながら、一齧りしたパンを咀嚼し飲み込んだ。
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