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    フェレル(春瀬)

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    フェレル(春瀬)

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    設定メモしてたらお話っぽくなった。


    ガレマール帝国軍のスパイのお父さんと
    グリダニアのエレゼンのお母さんから生まれた子供は
    帝国軍に捕まればフェリクスとしてガレマルドで育ち
    捕まらなければグリダニアの森の奥でフェレルとして育つ。

    私は辿れば皇家とも繋がるというガレマール貴族の三男坊だ。だが優秀な兄達に比べれば何もかも見劣りする私に家での居場所はなく、いつしか口をつぐみ目立たぬようにすることが習慣となっていた。
    しかし、この記憶に残りにくい顔と存在感の薄さこそを活かせると見出され、軍属となり辺境の動向を探る任務についている。表に出ている職務は辺境部隊の書記官だが、実際は民に紛れ情報を探る、いわばスパイだ。

    とはいえ私の任務は中、長期的なものが多く荒事は多くない。大抵は行商人を装って敵地の村や町へ通い、信頼を得て情報を仕入れたり流したり…そんなところだ。

    特に黒衣森の民は閉鎖的で余所者になかなか心を開かない。私は数年の間、何度も何度も通い、やっとグリダニアに程近い集落での立ち位置を得た。
    その集落の長はグリダニアの幻術皇と関わりがあるという重要な人物で、年老いた長に会いに幻術皇自身がこの集落まで足を運ぶことがあると言う。
    私はその末娘と恋仲になったのだった。

    娘は美しく聡明で、村を離れるときも行商のお仕事なのだからと心よく送り出してくれる。任務とはいえ、そんな彼女に嘘をついていることが心苦しく、私は本当に彼女に惹かれていることを自覚せざるを得なかった。

    ***

    本国へ帰還したのは久しぶりだ。上官への報告を終え、軍支給の自宅へと帰る。書記官にしては立派な家は今までの任務の褒賞の一つだが、私はほとんど居ることがない。人が住まなければ傷むので、実家から付いてきてくれた婆やを住まわせ管理してもらっていた。

    「婆や、次は人を連れてくるかもしれない。」
    「まあ…それは女性ですか?坊ちゃんの良い人かしら?ならばケーキを焼かねばなりませんので、早めに教えてくださいませね。今回のように急に帰られては婆やは寝巻きを替える間もありません。」
    「……連絡を入れなかったことは謝るから、坊ちゃんはやめてくれ」

    今回の報告をわざわざ帰還して行ったのは、上官に一つ願い出たいことがあったからだ。それは作戦終了時にグリダニアの女性を1人本国へ連れ帰ることだった。
    上官は私がそんなことを言い出したのを大層面白がり、作戦を完遂した後であることを条件として協力者として連れ帰る許可をくれた。

    さて嘘だらけの私のどこまでを彼女に開示しよう。実はガレマール出身の行商人なのだと言うか?家に連れてこられれば、ここは軍専用の住宅地だから軍属だと容易に知れるだろうが、その時にはもはや簡単には帰れないだろう。丁寧に外堀を埋めていくしかない。

    その時の私はもはや彼女を手に入れることしか頭になく、彼女との生活を勝手に夢見ては浮かれていたのだ。

    ***

    しかし諸事に忙殺され、私が彼女のいる集落を訪れたのは、そこを離れてから半年ほど経った後だった。手紙のやりとりはしていたものの、久々に会う彼女の姿に私は呆然とした。

    彼女は大きく膨らんだ腹を撫でていた。
    「あなたを驚かせたかったの。勿論あなたの子よ、精霊様にも誓えるわ。」
    私は混乱の極みだった。心当たりはないこともない、しかし想定していなかった。ガレマール製の避妊具も使用していたが、そういえばあの夜彼女はそれを珍しがって随分と長いこと触っていた。

    なるほど。行商人の私を繋ぎ止めるための彼女の作戦は成功したのだ。はかりごとの中で生きる私を策略にはめるとは、私は単純に恐れ入った。そして彼女が絶対に欲しくなった。

    ***

    しかし翌朝、状況は一変する。
    一緒に寝たはずの彼女は部屋におらず、いつも額に巻いている布が取れている。私の第三の目は薄目を開けたような形で、傷だと言い張れるよう化粧もしているので見られたところでどうと言うこともないが、きつく巻いた布が取れているのはおかしい。
    そして集落全体の雰囲気が異様だ。ヒソヒソと声をひそめこちらの様子を伺う姿もある。どうやら正体がバレたようだと悟り、そそくさと集落を出た後、私の軍属証が無くなっているのがわかった。おそらく彼女が持ち去ったのだろう。証拠としてはこれ以上無いものだ。しっかりと隠していたのに、本当に彼女は賢い。

    集落は今まで以上に閉鎖的になり、近くあるだろうとされた幻術皇の訪問もいつかは知れなくなった。作戦は失敗。私には撤収命令が下された。

    しかし他で継続中の作戦もあるため、私の軍属証は取り返さなければならない。もちろん、彼女と彼女のお腹の子もだ。
    おそらく集落で匿われているであろう彼女を手に入れるためには、多少荒っぽいことを起こさねばならないかも知れない。上官にそれを許可してもらうにはどんな理由がいるだろうか?

    撤収しながら、私は頭の中をフル回転させていた。
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