獄空小話「ほらよ」
「あ?」
卓上に広げられた書類の上に無遠慮に持ってきた荷物を置いた空却に眉をひそめる獄。
アポなしで弁護士事務所を訪れた事に関してはすでに慣れてしまっているようで気にとめていない。
「檀家さんから、ようさんおいなりさん貰ったんだわ。親父と二人じゃ食べきれんもんで、おすそ分けに持ってきたった」
「頼んでねぇぞ」
「頼まれてねぇからな。じゃあな」
「おいっ」
言うだけ言うと空劫はひらひらと手を振って帰って行った。
目の前に残された風呂敷に包まれた四角荷物にため息を吐くが、押し付けられたとはいえ貰ったものを無下にもできず、荷物を持って室内に設置されているカウンターへと移動する。
(そういや、昼飯がまだだったな)
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