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    torafuzame_

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    torafuzame_

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    ぷろぺし 転生後は日本人
    どヤクザ×大学生 出会っても無い…
    名前思いつかないので男と青年になってます
    わかりづれ〜〜 収拾付かなすぎて序章て感じで終わっていいですか(いいですよ)

    俺は本物の海を知っている。その海が何処の海なのかも分からない。見た事すらない。だが、俺にとって記憶の中のあの海こそが本物の海なのだ。幼い頃から慣れ親しんだ、この鈍い虹色が畝る腐った港は、本物の海なんかじゃあない。

    「──、──さん」
    名前を呼ばれ、男はうっそりとそちらに首を曲げた。いつもであれば名前を呼ばれたら直ぐに何だ、と尊大な声で返事をするものだが。男の様子を見て金髪のチンピラ然とした青年はこう思った。
    鬼の目にも涙。

    汚いこの場末の港を眺めてぼんやりとしている時でさえその全身から気魄のようなものを放つ男にそんな冗談を気安く言えるはずもなく、チンピラは続けた。
    「親父が呼んでました。早く行かないとマズいっすよ」
    思い当たる節があるのだろう。男は凛とした眉根をキツく寄せて、ああ、と低く返事をした。


    「ただいまあ」
    バイトを終え、古臭い一軒家の引き戸を開ける。
    「うひー、さみぃ」
    「おかえり。もう、だから言ったじゃないの。いくら気に入ったからって、こんな季節にタンクトップなんて早いわよ」
    良くも悪くも母親らしい母親は、廊下の奥から顔を出して青年に声を掛けた。
    「うるせえやい。上着着れば大丈夫だと思ったんだよ!」
    「あんた、明後日からまた学校あるんだから──」
    「風邪引かないようにだろ!わかってるって!オレはもうママっ子じゃねぇんだから、心配しないでくれよ」
    「だまらっしゃい。あんたがね、いくら頭を緑にしようが剃り込みを入れようがね、あたしの子供なんだよ」
    負けじと言い返す母親に、はいはい!と舌を出し、青年は2階の自室に向かった。
    「お袋はうるせぇんだ」
    ママっ子。今は随分と自分のものに出来たと思っているが、昔は人からそう呼ばれていた。もちろん、侮蔑だ。よくある、どこにでもよくある、ちょっとしたイジメだ。少なくとも青年は、当時の事をそう考えている。学校に行けなくなるほど辛いわけではなかった。しかし、ママっ子と呼ばれる事がコンプレックスになるには十分な悪意だった。だが、それ以上に、オレの事を何も知らないくせにママっ子と呼ぶな、と激しく思った。青年はその突発的に沸き上がる思考の正体が分からなかった。ならば、オレの事を知っている奴にママっ子と呼ばれるのは、許せるのだろうか?オレの事を母親以上に分かっている奴なんているのかな?
    結局、オレはママっ子なんだな、と溜息をつく。まあ、それも個性になる時代だと今は思っている。
    結構な年まで青年は自分の事をオイラと呼んでいたが、いかにもガキっぽいと嘲笑され、オレと言うようになった。それが中学1年生の頃。ガタイがいい割に小心者だと笑われ、あまつさえマザコン呼ばわりされる人生に嫌気が差して大学入学をきっかけに髪を緑色にしてみた。青年にとって、強い男の象徴と言えば、好きな漫画のキャラがしていたモヒカンヘアーである。見た目を怖がられてなかなか友達が出来なかった。それが去年の春。
    今年はどんな一年になるのだろう?ドライなふりをしてカッコつける大学の友人達のようにはなれず、青年は密かに4月1日が待ち遠しかった。何より青年は、買ったばかりのタンクトップを着て出掛けたかったのだ。出しっぱなしの布団に寝そべり、ハンガーに掛けたそのタンクトップを見上げた。黒い生地にピンクのハートがプリントされている。デザインより着心地の良さを優先する青年にしては珍しく冒険だった。ふだんこんなにパンキッシュな服は興味がわかないのだが、一目惚れだった。それになんだか懐かしくって───
    「うん、楽しみだなあ」
    一歩オシャレした服を、早く友達に見せたかった。


    「舎弟、舎弟ねぇ」
    ライターを点けたり、消したり。リズミカルに点灯と消灯を繰り返す光が男の金髪を照らしては翳り、照らしては翳りをしている。
    親父からの小言を頭蓋の内に映して反芻する。どうして兄弟の契りを交わさない?お前ともあろう男なら、舎弟の一人や二人居てもおかしくはない。むしろ、今の状態がおかしいのだ、と。
    ならばこそ、男は問いたかった。俺達のようなヤクザもんが、身内に弱みを見せる事が一番危ねぇんじゃあねぇのか?と。
    「マァ、そんな事言っちまえば俺のドタマに穴が開くわな」
    煙草を咥えて火を点ける。煙草の味を覚えてからずっと一人で火をつけてきた。今までの人生、全て自分一人の力で生きてきた。男はそこに誇りを持っていた。だが、何かが足りない。この煙草に火を点けてくれる誰かが「いた」気がしてならないのだ。まるで王子様でも望む女子供のようではないか。男は自嘲して煙草を海に投げ捨てた。本物じゃない海に払う敬意なんざ無い。どこから来たのかも分からぬ記憶の、美しい海が連れてくる何かが、男のうろを埋めてくれる──そんな気がしていた。
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    torafuzame_

    MOURNINGぷろぺし 転生後は日本人
    どヤクザ×大学生 出会っても無い…
    名前思いつかないので男と青年になってます
    わかりづれ〜〜 収拾付かなすぎて序章て感じで終わっていいですか(いいですよ)
    俺は本物の海を知っている。その海が何処の海なのかも分からない。見た事すらない。だが、俺にとって記憶の中のあの海こそが本物の海なのだ。幼い頃から慣れ親しんだ、この鈍い虹色が畝る腐った港は、本物の海なんかじゃあない。

    「──、──さん」
    名前を呼ばれ、男はうっそりとそちらに首を曲げた。いつもであれば名前を呼ばれたら直ぐに何だ、と尊大な声で返事をするものだが。男の様子を見て金髪のチンピラ然とした青年はこう思った。
    鬼の目にも涙。

    汚いこの場末の港を眺めてぼんやりとしている時でさえその全身から気魄のようなものを放つ男にそんな冗談を気安く言えるはずもなく、チンピラは続けた。
    「親父が呼んでました。早く行かないとマズいっすよ」
    思い当たる節があるのだろう。男は凛とした眉根をキツく寄せて、ああ、と低く返事をした。


    「ただいまあ」
    バイトを終え、古臭い一軒家の引き戸を開ける。
    「うひー、さみぃ」
    「おかえり。もう、だから言ったじゃないの。いくら気に入ったからって、こんな季節にタンクトップなんて早いわよ」
    良くも悪くも母親らしい母親は、廊下の奥から顔を出して青年に声を掛けた。
    「うるせえやい。上 1971

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