情操教育玄関に荷物を置き、単独リビングに乗り込む。ヨガマットの上でプランクをやっていた影山が顔を上げて「おかえりなさい」と言う。
「ただいま」
「荷物、どうしたんですか?」
「あのさ、影山って動物得意?」
影山は不思議そうな顔をすると筋トレをやめ、居住まいを整えた。
「動物?別に……俺は動物のこと特に何とも思ってないけど……動物が俺のことを多分好きじゃない」
ちょっと不貞腐れたそうな顔をする影山を見て、高校生の時に「俺、なんか動物に嫌われている様な気がします」と呟いていたのを思い出した。帰り道に出会った野良猫が、俺の足にすり寄って甘えてきたときのことだ。未だに和解への道は遠いらしい。
俺は気のせいだよ、と言いながら「喘息とかあったりする?」と続けた。
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