後ろをついていくだとか、遠くから見てろだとか、そんなことばかり言われそれに従って生きてきた。自分から前に出てスタスタ歩いていくなんて許されないことだったし、周りにもそんな出しゃばった真似はするな、の重圧ばかりかけられてきた。そんな人生だったから、ついに箍が外れてしまったのかもしれない。
みし、と思い切り体重をかける。下で潰されている彼はうぐ、と虫の音のような短い悲鳴を吐いた。なるほど、確かに気分が良い。これが勝者の位置なのか。病みつきになる酩酊感に襲われる。
「愚かにも僕に踏まれる気持ちはどうだ」
そんな悪役めいた言葉がぽろりと口から出てしまうくらいは酔っていた。ちっぽけな自尊心はこんなことだけで満たされてしまった。
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