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    真次たまこ

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    真次たまこ

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    巨神ゴーグ 少年マノンさんのゴーグへの嫉妬

    「いやないやないやなヤツ」あの青い巨人のマリン・ブルーが視界に入るたび心の奥がざわついた気持ちになるのを隠せない。
     マノンとその双子の弟ゼノンにあてがわれた守護ロボット、ドークス・ガーディアン二体は瓜二つの主人たちとまた同じように似た相貌をしていた。もっともそのボディカラーは全く異なっているため間違えるということはない。
     脳波コントロールの能力を買われ、幼くして人々を導く指導者ドークスの立場を担うことになったマノンだが、まだ幼い彼は唯一の肉親である弟ゼノンを心の拠り所としている。ゼノンもまた兄を頼りにしていた。

     ところが弟のガーディアンは自分の命令などさっぱり聞かない。弟ゼノンの命令以外は聞く耳を持たないのだ。汎用ガーディアンであるラブルタイプ・ガーディアンは遠隔操作や複数同時に運用させることも可能なのだ。いかにドークス・タイプとはいえこちらは指導者である。有事の際には連携して行動してもらわねば困る。故障なのではないかと科学者陣に詰め寄ったが、ドークス・タイプがある程度の「意思」を持っている影響のためだと説明された。

     ――バカな。青いガーディアンに意思があるのなら、主人の兄を認識できてもおかしくはないはずだ。その程度の関係性は理解できるだろう。もしくは、それをわかっていてゼノンの言うことだけを聞いている? それとも機械に血縁関係など通用しないのか。

     マノンにとって最も苛立たしいのは、弟が青いガーディアンと共にいるときは自分の知らない顔をしていることだ。まるで内緒話を二人でしているかのように。双子として産まれ、今まで片時も離れたことのなかった存在が自分の知らないところで知らない話をし、笑っている。寂しくも不穏になる不快な感情を彼は初めて知った。ちょうど親、友人、きょうだい……それらを突然現れた何者かに「取られた」と思うような。

     あのガーディアンは、ぼくからゼノンを取ったんだ!

     はっきり自覚すると、青い巨人に対する憎しみがふつふつと湧いてきた。もちろん弟にも言わず、自分だけの胸のうちにしまっておいたが。こんな子どもっぽい感情を抱いているなどと言えるはずもない。
     とはいえ、あのマリン・ブルーをちらちらと横目で追うことはしばらくの間続いた。いつかあの深い色が心地よいものに変わるのだろうかという思いを秘めつつ。

    ***

     やがて三万年の年月が経過し、あの青いガーディアンは二人の子どもを伴ってマノンの前に現れた。メンテナンスを受けるように指示をしたが、その前に勝手に判断し検査室へ向かっていく。傍目にはマノンの命令に従ったように見えただろうが、相変わらずだ。

     やはりあいつは憎らしい。

     余談ではあるがある事情により作業用メカの大部分があの青いガーディアンに破壊された。これらの修理は資材不足のため完全には終わらなかったことを付記すべきであろう。
    (了)
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