鍛・
四肢に鈍い痛みが生じている。
劉曄は薄く柔らかなマットの上で腕立て伏せをしていたのだが、百回も迎えない内に体が音を上げ始めてしまったのだ。
「…止めていいか」
「まだ五十回さえ出来てないのに?」
「体の節々が痛み始めたという事はそれなりに効いているんだろう」
「おかしいな…。俺の知っている劉曄サンはこんなもので音を上げて諦める奴では無かった筈だが…」
「じゃあ違う私なんじゃないか?」
グギギと音を立てんばかりに両手で支えた上体をマットすれすれまで落とす。普通の筋トレならばもう少し楽だっただろう。決して運動不足な訳では無く、読書をしながら背に肘を乗せて来る魯粛の重さのせいなのだ。
「本当に止めるのか?」
「続けているのが見えないか?」
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