知るモノ「ねぇカルエゴくん知ってる?」
散る事の無い花を見上げながらバラムは僅か後ろに居るカルエゴを振り返る。
「人間界の花はほんの数日咲き誇って散ってしまうんだって」
「数日だけ?」
「うん。儚いよね」
どこか寂しげに笑ったバラムに、カルエゴはそんな短い時間しか咲かないものに想いを馳せる意味が解らんと息をついた。
「でも……儚いからこそ綺麗なのかもしれないね」
そう微笑んだバラムにカルエゴは口を出ようとした言葉を飲み込んだ。
「いつか見てみたいな」
「……見られるといいな」
お前の望んでいる物はあると伝えてやりたいと思えど、口にすることは許されていなかった。バラムの探求心も願望も知っている。しかし一族が知っている事実は口に出来なかった。
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